今注目すべきはジャンルを超えて活況を呈するイギリス? 2021年1stクォーターを象徴するアルバム4選

アーロ・パークス(Photo By: NBC/NBCU Photo Bank via Getty Images)

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、音楽カルチャー誌Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2021年3月25日発売号の誌面に掲載された2021年1stクォーターを象徴するアルバム4選の記事。

ドレイクやケンドリック・ラマーなど2020年最大のビッグリリースと期待された幾つかの作品がいまだ先送りになったままの3カ月間、もっとも注目すべき作品は未曾有の活況を呈する英国から産み落とされた。アーロ・パークス、スロウタイ、ブラック・カントリー・ニュー・ロード、フー・ファイターズ――今聴くべき4枚を紹介しよう。

1. Arlo Parks / Collapsed In Sunbeams



本人がいくら否定しようとも、「Z世代の代弁者」と呼ばれてしまうのも無理はない。ロンドン出身の20歳、アーロ・パークスのデビューアルバム『Collapsed In Sunbeams』は、同世代の日常に潜む苦悩を鮮やかに描写し、そこに慈愛の眼差しを投げかけている。ビリー・アイリッシュともオリヴィア・ロドリゴとも違う、新世代アイコンのひとつの形を象徴する傑作だ。本作の主なテーマは、メンタルヘルスの問題やセクシュアリティの抑圧。2010年代後半に前景化したポップの主題を継承したものだが、精神不安を扱ってきたエモ新世代の陰鬱としたムード、もしくはアルカ最新作の如く性的マイノリティを祝福するような力強さは表立っていない。BPM80~90後半の穏やかなブレイクビーツと接合された、軽やかなソウル/R&Bのフィーリング。大切な友人にそっと語り掛けるようなパークスの親密な歌声――むしろここで際立っているのは、冬の陽だまりを思い起こさせる、冷えた心と体をやさしく包み込むような暖かさだ。

本作がこのようなムードを持っているのは、パークスがメンタルヘルスやセクシュアリティの問題を当事者の苦悩として歌っているのではなく、そうした問題を抱える友人やパートナーの気持ちに寄り添い、静かに思い遣るような詩作のスタイルを選択していることが大きい。例えば「Black Dog」は、心の病を抱えた大切な人を部屋から連れ出し、ちゃんと食事と薬を取らせるために近所の店まで付き添うという曲。「Green Eyes」は長続きしなかったパートナーについての曲だが、その相手を責めたり未練を歌ったりするのではなく、パートナーが同性愛に理解のない両親から抑圧を受けていることを心配している。2010年代はメンタルヘルスとアイデンティティの不安の時代であり、だからこそセルフケアというアイデアが重視されるようになった。無論それは今も重要だが、パークスの曲にあるのは、セルフケア以上に互いをケアし合うことが重要という発想だ。2010年代ポップの主題を継承しつつ前進させたという意味で、これは2021年の始まりにふさわしい作品と言える。

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