ナッシング・バット・シーヴス、全英制覇に挑むバンドが語る「新境地」と揺るがぬ信念

 
「R&B」という新たな要素

その前に、なぜ彼らがUKロックを代表する存在として、これだけ期待されているのかと言えば、それはスタジアム規模のロックを鳴らしていることに加え、彼らのサウンドが現代のUKロックの粋を集めたものに他ならないからだ。

ファルセットを巧みに操りながらコナー・メイソン(Vo)が歌い上げるメランコリックなメロディに顕著な耽美性、ロイヤル・ブラッドと比べられるきっかけになったリフで聴かせるロック・サウンド、レディオヘッド~ミューズの系譜に繋がるプログレ感覚、そしてカサビアンから学んだというクラシックなロックとモダンなアプローチの融合――それらの要素の配合を、曲ごとに変えながら、彼らなりのアプローチを加えたものがNBTのサウンドになるというわけだ。その意味では、前述したとおり、『モラル・パニック』はこれまでの延長線上にある作品と言えるのだが、その一方で、前2作にはなかった新たな要素が加わっている。それがR&Bの影響だ。



きっかけは前作をリリースした後、ドムがコナーに言った「もっといいメロディ・ラインが書けたような気がするんだ」という一言だったという。

「(言われた時は)マジか?なんだよ、むかつくななんて思っていた(笑)。でも、後になってみると、確かに、そうだ。あいつは正しいなんて思うようになった。そこからポップ・ミュージックを猛研究したんだ。ポップ・ミュージックは昔から大好きだけど、ちゃんと研究したのはその時が初めてだった。ヒップホップのインナー・ライムとか、リズムとか、ビートを中心に跳ねるような感じにする方法とか、コードの構造とか。主にR&Bを研究したね。僕はR&Bの大・大ファンなんだ。NBTに曲を書いてなかったらR&Bの曲を書いていたと思う。それくらい大好きなんだ。あとポップ全般もね。それからドムもポップやR&Bの人たちと仕事をしたことがある。それで僕たちはソングライティングでもそっちの世界に飛び込んでいった。間違いなくそれが反映されていると思う。たとえば『イズ・エヴリバディ・ゴーイング・クレイジー?』は元々、ソリッドなロックだったんだけど、どうにも気に入らなかったんだよね。頭のどこかに引っかかるものがあって。それでメロディにR&B的な要素を取り入れることにしたんだ」(コナー)

もちろん、R&Bの影響はそれだけにとどまらない。たとえば、バラードと思わせ、ダンス・ポップ・ナンバーに展開する「モラル・パニック」はもちろん、「フリー・イフ・ウィー・ウォント・イット」「ゼア・ワズ・サン」といった曲からは、80年代以降のUKギター・ロックにR&Bの要素を取り入れようという意欲が窺える。また、その2曲と同様にUKギター・ロックを鳴らす「リアル・ラヴ・ソング」は、後半のシンガロングがゴスペル風という意表を突いたアイディアに思わずニヤリ。そうかと思えば、ドムが「ローファイなR&Bやヒップホップに時々、マリリン・マンソンが混じっている」と説明する「フォビア」のような攻めた曲もある。


 
 
 
 

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