矢沢永吉が語るバラードの魅力 90年代、秋元康から打ち明けられた「本音」とは?

秋元康から言われたこととは?

ー14曲と、このアルバムにもっとも多くの曲が選ばれている90年代は、CM、ドラマ出演などもあり、より一般層に矢沢さんの音楽が届けられた時代だと思います。今回再録音されている「いつの日か」(作詞・秋元康)は初主演ドラマ『アリよさらば』のエンディング曲でした。

矢沢:これはまず、ドラマ『アリよさらば』に出ないかって、TBSから話が来たんです。そこに秋元さんも関わっていて(企画・原案として参加)。それをきっかけに、秋元さんとは1回だけ食事したことがあるんです。そのとき、秋元さんはおニャン子クラブなんかを手掛けてガンガンやってた頃で。後にAKB48から何から、そういうグループを手掛けたら秋元康が一番、というのがあるじゃないですか? でも、僕のやっている音楽や生き方とは相容れないものがありますよね。だからこそ、秋元さんは秋元さんで、自分の想像外のところにいる矢沢永吉には興味があったんじゃないかな。僕は僕で、自分とは相容れないと思いつつも、この人はテレビ局とバッチリ手を握って、頭の良い人だなって思ってたんです。そういう意味では、相容れないものはあるけれども、お互いに「こいつは自分にはないすごいものを持っている」というものがあったんじゃないかなと思う。

それで、食事をしたときに秋元さんが、「矢沢さん、本音を言いますね」って言うんですよ。今考えても、確かに秋元さんは本音を言ったんだろうなって思うんだけど、「ちょっと生意気に聞こえるかもしれないですけど、僕はどういうものをどういう風に作れば当たるのかということがわかるんです」って言ったんです。僕はそれを聞いて、確かに実績としてあるわけですから、そうなんだろうなって思った。そして、「そんな僕が矢沢さんにはずっと興味を持っていました」って言うんです。なぜ興味を持ったのかというと、例えば自分のスーパーマーケットがあるとすると、どういうディスプレイをしてどういう宣伝をすれば、このスーパーが当たるかはわかってるし、必ず当たりますと。それで3軒隣を見たら、「矢沢スーパー」があったと。もちろん例えばの話ですよ? そのスーパーのディスプレイとか宣伝の仕方を見ていると、自分にはよくわからない出で立ちなんだけど、そこにいつもたくさんの人が並んでいると。「なんであの矢沢スーパーには必ず人が並んでるんだろう?」って、ずっと気になっていたっていうのが、1回だけ食事したときに秋元さんが僕に言った言葉です。それは褒めているのかな?と思ったから僕は「ああ、そうですか」ぐらいに言っておいたけど(笑)。



ーははははは(笑)。

矢沢:僕からしてみたら、秋元さんのやっていることには興味なかったけど、じゃあ実績はどうだって言われたら、「秋元康、さすがだな」とは思ってますよ。

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