ニューアコが示した新しい価値観と「自由」の味わい方

OAU

『New (Lifestyle) Acoustic Camp 2020』と銘打って開催された今年の「ニューアコ」。新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって多くのフェス・イベントが中止あるいは延期の判断を下していく中、ちょうど公演日1カ月前の8月21日に開催を発表。

それと同時に、群馬県・みなかみ町観光協会の後援と協力を得たこと、入場者数を2500人(通常開催時の約4分の1)に動員を制限しソーシャルディスタンスを保つための環境を作ること、過去のニューアコ経験者(あるいは経験者を含んだグループ)のみの参加に限定することなどが、方針として示された。

イベント名に「(Lifestyle)」という言葉が入っているのは、人と人の物理的な距離感、精神的な距離感が離れていく今においての新しい生活様式を模索する意味合いを込めてのものだろう。逆に言えば、これまでずっとニューアコが追求してきたのも、フェスとしての在り方ではなく(あくまで『キャンプ』である)あくまで人と人の距離感と生活の在り方と、その一部としてふっと存在する音楽の姿なのである。

昨年の秋にTOSHI-LOWとニューアコに関するインタビューを行った際、「ニューアコを始めた当初から『できるだけルールを作らない』『エリアの垣根をセキュリティが仕切るようなものにしない』みたいな理想があった。その理想を叶えるためにどうしたらいいかと思ったら、結局、一人ひとりが気づいて行動に移してくれることが大事になってくる。自分で選択してここに来たっていう覚悟があるからこそ、どうするべきか。不備があればこちらが悪いけど、天気とか、自分たちで解決できることに関しては、イベントや人のせいにしちゃいけない。そういう姿勢を徹底してきた結果が今だと思う」と話していた通り、ガイドラインと方針を示しながらも、今回の開催を後押ししたのは何よりニューアコの歴史とそこに来場してきた人々への信頼である。

今回ばかりは、ニューアコ史上初めてと言ってもいい「ルール」として「あたらしいニューアコの、9個の約束」が提示されていたとはいえ、その内容を見れば、マスク着用やソーシャルディスタンス維持の徹底、コロナウイルス接触アプリダウンロードのお願いなどなど、人への思いやりにおいて最低限のものばかりだった。これはもちろん「あとは自己責任で好きにやれ」ということではない。イベント開始当初から、テント間、人間間、ステージ間をゆったりとしたものに設定することで人と人が思いやりをもって行動できる「距離感」をひとつのテーマにしてきたニューアコだからこそ、「ルール」という強制を与えるのではなく「人も自分も自由であるために守るべきこと」という能動的な思考を生むことができるのだろうし、それを信じての開催だったのだと思う。

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