ライゾマティクスの実験 オンラインから次のフェーズへ

Messaging Maskのアイデア

―Messaging Maskのアイデアから、どう形にしていったのか、聞かせていただきたいのですが。

花井:4月と5月、いろんなイベントをオンラインでやっていくという流れになった時に、自分自身がリアルスペースのイベントに行きたいなと思い、どういう形だったらこの状況で自分が行って楽しめるのだろうかというのを考えたんです。そこで、声を出さなくても声を出した気になって楽しむことができれば、それは一つの解としてあるんじゃないかと思いました。最初は単純な拡声器のようなデバイスも考えていたんです。マイクとスピーカーがあって、自分は小さい声でしゃべっているけど、それが大きな声になって届くみたいな。でもいろいろ考えていくうちにもっと別の体験ができたらいいかなと思いまして。音声認識を使って一旦文字に変換してスクリーンに大きく出すとか、ARで見せるとか。ヴィジュアライズの要素を組み合わせて見せれば、もう一つ面白いことができるのかなと思いました。

・新たに開発された、Messaging Mask(メッセージング マスク)というデバイス



―マスクはどのような仕様になっているのですか?

花井:中身は編み編みのメッシュ構造で、LEDが貼ってあり、裏側に小さいマイクが付いている感じです。今はまだプロトタイプなので、基盤とかバッテリーが付いていて、目に見ないところはゴツいんですけど(笑)。これを大量に作るとなったら、また考えていきたいなと思います。

―これは実際にイベントで使っていく予定はありますか?

花井:サカナクションの山口一郎さんがやってるNFというイベントがあって、ライゾマティクスがいつもVJをやらせてもらっているんですが、そのオンラインイベントでまずはテスト的に使えないかという相談をしてるところです。無観客のイベントなので、お客さんではなく出演者の人たちに付けてもらう形になるとは思います。(注:7月18日「NF ONLINE #2」にて、Messaging Maskを初導入)

―今後、リアル・イベントが復活した場合、リアルとの融合としてはどのような使い方を考えていますか?

花井:配信ライブでは、いろんな人が観てリアルタイムでコメントしますけど、Messaging Maskはリアルスペースでもそういうことができるデバイスになるのかなと思っています。今後は、リアルスペースでイベントをやるのと同時に、ライブストリーミングでも配信するという、2本立てみたいなものがけっこうスタンダードになるような気がしていて。そういう時にネットでコメントをしてもリアルでつぶやいてもそれが同じ空間でヴィジュアライズされて見れるようになったら、それはそれで新しいのかなという気もしてます。ちょっと小さい声でも、つぶやくことによって気持ちの高揚を表現したり、あるいは感情を共有したりできる。そういうことの手助けになればいいかなと思ってます。

―3つの取り組みについてお話を聞いたのですが、それ以外の取り組みも含めて、今後やっていきたいことを教えてください。

真鍋:AR、VRみたいなことは今までもやってきました。ただ僕らがやってきたことというのは、配信で言うと1曲だけとか、本当に短いものだったんです。でも今いろんな音楽フェスの配信ライブを観てると、2時間とか長いものだと8時間やってたりしますよね。2時間ずっと画面を見ているのってけっこうしんどいので、結局ラジオみたいな楽しみ方になってしまう。それもいいと思うのですが、家で観るとしても、画面を観ないでも楽しめることだったりとか、ちょっと違う楽しみ方を考えたいんです。実際に100%リアルに戻る前と、今の様に自宅で画面とにらめっこしているのと、その間で何ができるのかとうのを探していきたいなと思っています。

―今後の予定は?

真鍋:毎週金曜日にPLAYING TOKYOをやっていきます。開催場所やゲストも様々にと考えていて、スペシャル版などもあるのでお楽しみに。あと、9月にLAのレーベル、Timetable × ライゾマティクスのBOILER ROOMをやる予定ですね。



ライゾマティクスのファウンダーであり、アーティスト、DJ、プログラマーの真鍋大度さん


ライゾマティクスのプログラマーの花井裕也さん

https://rhizomatiks.com

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