ライゾマティクスの実験 オンラインから次のフェーズへ

eスポーツと音楽を組み合わせた理由

―PLAYING TOKYOで、eスポーツと音楽を組み合わせた発想はどこから来たんですか?

真鍋:それは僕が『ストリートファイターV』をめちゃくちゃ好きだからで(笑)。前にエキシビション・マッチに出させていただいた時に、カプコンさんやプロ選手との伝手も出来て今回につながったんです。『ストリートファイター』がヒップホップ・シーン、音楽シーンに与えた影響もアメリカでは特に大きくて。ゲームとDJの相性が良いから組み合わせやすいというというのもあります。

―バーチャル・クラブの雰囲気も良かったですね。フロアでDJを前にしてアバターのような人たちが踊っている感じも面白かったです。

真鍋:あれはダンサーが踊ってるモーションキャプチャのデータを使いました。2015年の正月に「NEXT WORLD 私たちの未来」というNHKの特番の中でサカナクションがライブを行い、そこにウェブサイトで作ったアバターで観客になって参加する、というのをやったのですが、そういうことも今後は試していってもいいかなとは思っています。それこそ、今ではFortniteみたいに大きなスケールで、バーチャルとeスポーツとヒップホップが組み合わさったお祭りが行われているので、一般的になってきているなと感じます。

―今後コロナが収束に向かうことも想定して、バーチャルとリアルを融合するようなことも考えているんですね。

真鍋:やっぱりしばらくは密な状態にはなれないだろうし、大声で叫ぶこともできないんじゃないかというので、それこそ花井が考えてるMessaging Maskも出てきたわけです。100%戻るまでの間にどういうことをやっていくのか。そこは課題になりますね。

―Social Distancing Communication Platformについてもお聞きしたいのですが、今公開されているのはプロトタイプなんですよね。

真鍋:現状、プロトタイプを公開していろんな方に参加していただいて、感想を聞いて、というのをやっているところで。今後どういう設計をしていくのかも含めて作っているところですね。SpatialChatのような類似のサービスもあるので、どうやって差別化するのかということも考えつつ作っています。

―プロトタイプを見ると、DJのステージが2つある音楽フェスの会場のような設定になっていて、そこでユーザーが会場内を移動しながら、音楽を聴いたり、飲んだり、他の人と話したりできます。今後はどのような使い方が考えられますか? 

真鍋:配信の音楽ライブってTVやライブDVDを観る体験に近いですよね。一方で、完全にバーチャルな世界で観るもの、例えばFortniteのトラヴィス・スコットにしてもそうですし、日本でも、clusterで全員がアバターになってバーチャルの渋谷で音楽を聴いたりするようなメタヴァース系のイベントも行われています。ちょっとオフ会っぽいその二つの中間になるようなものがいいかなと思って。アバターになって参加するのもいいのですが、普段の延長だと人の顔が見えてしゃべる方がコミュニケーション的には盛り上がりやすい。僕なんかは、普段バーとかで飲んでる友達とわざわざアバターになって話すのはちょっとな、と思ってしまうので(笑)。Zoom飲み会もけっこうやりましたが、10人を超えてくるとつらいんですよね。

動画】バーチャルならではの演出と世界観で繰り広げられたトラヴィス・スコットのライブ(映像)

Social Distancing Communication Platformのように、何となくオフっぽい感じでコミュニケーションを取りつつ、DJに近づけば音楽が聴けるし、離れれば音楽は聴こえなくなる。そういうリアルスペースに近い感じが良いと思って作ったというのがあります。あと僕は大学で授業をやるのですが、Zoomを使って授業をやると、結局帯域を稼ぐために「カメラをオフにしてください」とか、「ノイズが入ってくるのでマイクをオフにしてください」ということになり、ほぼ放送大学状態になってしまうんです。だから今、大学で使えないかというオファーを数多くいただいています。新入生同士のコミュニケーションがなかなか取れなくて大変という問題もあるみたいなので。そういうことの手助けにもなればと思ってますね。

―実用化に向けて、次のステップは考えていますか?

真鍋:大きくは二つあって、一つ目はインタラクション。今は背景の画像を変更できるだけなのですが、アイコンの位置やカメラ画像、マイクの音量を使ってフロントの絵を生成できるようにすること。もう一個は会話の解析ですね。このグループはゲームの話をしてるな、ここは音楽の話をしてるな、とかそういったことがオンラインだと簡単に分析できるので、その解析データを用いて面白いことができるかなと。

―Messaging Maskについてもお聞きしたいのですが、真鍋さんはすでにラジオ番組でPerfumeをゲストに迎えて、この話をしていましたよね。(注:「ライブ会場に観客が満員に収容できるまでは、観客は大声を出せないので、マスクをしてもらって、内側にマイクを取り付けて、囁き声を拾って、そのセリフを光や文字にして、ステージのモニター画面に投影していく」という話)

真鍋:そうですね。本当はこのラジオ番組に合わせて公開できたらいいなと思っていたのですが。、少し時差が出ましたね(笑)。

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