原摩利彦×森山未來が語る、コロナの現実を受け入れるための表現

「PASSION」MVに出演した森山未來(Courtesy of Beatink)


受け入れがたい現実を、どうやって受け入れていくのか

─異なるものがひとつに合わさるというと、原さんの音楽もフィールドレコーディングとピアノのメロディが違和感なく自然と溶け合っている印象があります。

原:フィールドレコーディングをしているときに耳を澄ましていると、音のシナリオが見えてくるのが好きなんです。

─街の雑踏に、ですか?

原:例えば、音に集中して映画を見ると、映像のカットが変わる前に次のシーンの音が入ってきたり、ちゃんと音のシナリオが書かれているのがわかる。自然や街の中でも同じくシナリオが存在している。そのシナリオをベースにすると、街の雑踏がピアノの音や電子音と馴染むんです。共存しないはずの音が同じトラックの中で存在させるのが楽しい。


MV撮影現場での原。録音機を回してフィールドレコーディングをしている。


約8時間の舞台作品、ポール・クローデル作『繻子の靴』に参加していたとき、能管と電子音とを音響的に共存させるということを発見。「能管はふく度にピッチが変わるので、ピアノなどで伴奏するのもほぼ不可能だし、どうしようか考えて。伴奏するのではなく、あるがままにともに置くのがいいと思いました」このときの経験が作曲技法に影響を与えた。

原:音のコラージュというか、DJミックスというか。異質とされているものだって、本当に異質かどうかはわからない。さっきのコンテンポラリーダンスとストリートダンスの話と同じですね。

─音にしかり、ダンスにしかり、今の世の中にしかり。「Passion」にすごく合うなと思うのですが、受難という言葉に「難しい」という漢字があるように、やっぱり受け入れがたいものもあると思うんです。今回のMVは、その受け入れ難さを超えた先にあるような景色かなと思いました。

原:そうですね。僕自身の「Passion」のコンセプトも変化していきましたし。本当に、コロナウイルスの件があったので、諦めてしまうこともできたんです。冷静に状況を見ることはもちろん大事です。でも、見すぎて萎縮するのではなく、今回は偶然の力も相まって、可能な範囲でできることをやった。そうしたら想像以上の気付きがあったので、瞬発力を持ってやるっていうのが大事なのではないか。そうすれば前に進めるのではないかと実感させられました。



nouseskou:自分も楽曲制作をしてて、そういう視点からですが、こんなにも透き通っているのに密度のある繊細で優しい音は殆ど聴いた事ないです。それと、個人的な事ですが自分がしたくない作業で気分が落ち込む時があり、その時は「Passion」を3時間程ループ再生してました、助けてもらいました(笑)。

森山:僕は3月の頭からずっとこの曲を聴いているので、「コロナ期=Passion」のイメージがついてしまってるぐらい(笑)。目の前に差し迫ったウイルスで翁は喜んでいるかもしれないけれど、僕は人間なので、受け入れるというのは、そんなに簡単じゃない。仕事にも影響が出てますし。

でも、受け入れるというか、諦観をもつしかないと思ってます。「死なへん」と思いたいけれど、自分が死ぬタイミングはわかりませんから……こういう大きな転換の時にいつも思います。

世界が変わったときに淘汰されてしまうのか、されないのか、ミューテイトしていくのか。どのポジションに自分がいるのかは、個人の力ではどうしようもないこと。

新しい状況を生きていくことは、変化の道を歩みだしているということ。今、その狭間にいる僕は、世界を冷静に客観的に俯瞰しながら、でも自分自身の美意識みたいなものを作品に転じていくしかない。摩利彦だったら音楽に、僕だったら身体で。それが人の心を打つのか、飯の種になるのかわからないけど、表現を信じて生きていくしかない。

原:合気道みたいに、向こうから力をちょっと流れを変えて返す、みたいな(笑)。やっぱり……逃げられない状況みたいなものが全世界にある。リスクを最小限に押さえて、作品を完成させることを模索していった経験にもなりました。受け入れがたい現実を、どうやって受け入れていくのか。受け入れることは、妥協や従属ではなく、何をすべきか判断し、前に進むと決意するということ。「Passion」の意味合いを「受け入れる強い気持ち」として捉えると、相反する2つの言葉も繋がるのかなと。



リリースを記念し、今週6月6日(土) 20時より、原 摩利彦Instagramアカウント(@marihikohara)にてライブ配信を行うことが決定。トークを交え、『PASSION』収録の楽曲を演奏予定。


原 摩利彦
『PASSION』
2020年6月5日リリース

〈収録曲〉
1. Passion
2. Fontana
3. Midi
4. Desierto
5. Nocturne
6. After Rain
7. Inscape
8. Desire
9. 65290
10. Vibe
11. Landkarte
12. Stella
13. Meridian
14. Confession
15. Via Muzio Clementi

サブスク&購入ページ
https://song.link/marihikohara

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