原摩利彦×森山未來が語る、コロナの現実を受け入れるための表現

基本的には交わらない、コンテンポラリーダンスとストリートダンス

─森山さんはコンテンポラリーダンスの印象が強いのですが、今回振付師にストリートダンサーのnouseskouさんを迎えたのはなぜですか?

森山:kouを知ったのは1年ぐらい前の京都のイベントでした。僕の友人のコンテンポラリーダンサーと一緒にクリエイションしているのを見たときに「機会があったら俺も一緒にやりたい」と思ったのがはじまりです。

─でも、ジャンルが違いますよね?

森山:そうそう。ストリートダンスとコンテンポラリーって、基本的に交わることが難しい。

─交わらない。なぜでしょう?

森山:時間性が違うから……ですかね。ストリートダンスって、バトルのイメージが強い。表現として成立する時間軸で行くと30秒、1分、1分半とか。ダンス的に言うと、エイトエイトや16エイト……この時間軸で相手に勝てるか勝てないかが決まる。これがストリートダンスの基本だと思うんですね。

だけど、僕の考えるコンテンポラリーな表現というのは、もっと長い時間の中で構築されていくもの。流れていく時間の中で何かしらのコンセプトを軸にコンテクストを繋いで、身体だけでなく様々なイメージを織り交ぜながら伝えていく。だから、ジャンルという枠組み以前に遠い表現だと思っていたんです。

でも、kouは突然変異というか(笑)。多分それは、彼がストリートダンスというフレームから良い意味で逸脱していて、すごく横断的だから。「Passion」という曲に、kouが入ってきたらどんな化学変化が起こるだろう、と思って提案させてもらいました。

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nouseskouと森山未來

nouseskou:確かに、その時間軸での考え方は面白いな。もしかしたら観る側にも色んな時間軸が存在してそうやな。複雑すぎて今この瞬間では考えがまとまらないからまた今度飲みながら議論しよう(笑)。

未來と自分は同い年で、今回のクリエイションでも(笑)大宮大奨含め毎晩のように一緒に銭湯行ったり道端でビール飲んだり語ったりしていたんですけど、そういう何気ない時間の共有を楽しめる人・仲間と生み出す表現はすごく尊いなって想います。この部分に関しては言葉では説明しきれないです。宇宙的な事なので(笑)。とにかく、この共有があるからこその特殊な振付だったと思います。

それと、未來は誰かの良い部分を咀嚼して、取り入れていく力がすごいんです。アニメで言ったら、全員のワザを盗める特殊能力を持ってるキャラ的な(笑)。

森山:盗むって!(笑)

nouseskou:あ! でも完璧には使いこなせないんやで(笑)。振付に関しては、未來が生み出してくれた翁の設定の中、各々が感じるイメージを即興で体現し合いました。それらを納めた映像を未來が何度も分析し咀嚼して新しいひとつにまとめていってくれたように思います。それはきっと未來の特殊能力と共有した尊い時間があったからこそだと思います。

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原:僕は撮影現場も見学させてもらったんですけれど、すごく不思議でした。映像を見ると未來さんが一人でダンスをしているように見える。でも、現場では隣でkouさんも一緒に踊っていて、2人の身体で合わさって、新しい生命体になっている感じで……。

nouseskou:(自分がやったのは)客観視と言うとロマンがないので、僕の中に存在してる未來、未來では感じられない未來を自分なりに伝えたくらいです。それを彼が例の能力で瞬時に更新していくので自分はほぼ何もしてないです、ただ友達が側にいたよってくらいです(笑)。

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