コロナ対策進言のため専門家はFOXニュースを利用、トランプ大統領や政権関係者も日々チェック

大統領とのコミュニケーションは直接ではなく、メディアを通して

政権内部の医療専門家ですら、最高司令官への伝達方法としてメディアを活用している。3月の最終日曜日、ファウチ博士はCNNに出演し、現行のソーシャル・ディスタンシングや渡航規制を継続したとしても新型コロナウイルスによる死者は10~20万人に上るだろう、との推計を示した。イースターまでに規制を解除するというトランプ大統領の約束通りに規制緩和を早まれば、死者はさらに増えるだろう。ファウチ博士は同じ主張を大統領執務室でも進言した。政権内外からの攻略は相乗効果を発揮したようで、同じ日、トランプ大統領はイースターを目処にした規制解除発言を撤回し、政府のガイドラインを4月まで継続すると発表した。

しかし、政府の専門家がTVに出演しても毎回このような結果になるわけではない。3月26日、ホワイトハウスのコロナウイルス対策調整官デボラ・バークス博士はクリスチャン・ブロードキャスティング・チャンネルのインタビューに応じ、トランプ大統領が「科学文献や資料を熱心に読み込んでいる」と称賛した。大統領の会見で毎回目にする光景からは信じがたい発言だ。

バークス博士の発言は怒りと疑念を呼んだ。だが、大統領に最も近い科学者(主にファウチ博士やバークス博士)も、大統領に歯向かったり、忠誠を誓おうとしなかった他の政権メンバーと同じ脅威、すなわち解任の脅威に直面している。実際、この数週間で取材した複数の専門家から、ファウチ博士とトランプ大統領の対立を煽るような記事は書かないでくれ、と念を押された。「そういう記事を見る度、大統領の気性の荒さも踏まえると、どうか記事がなかったことにしてくれと神に祈る自分がいます」とハーバード大学公衆衛生大学院免疫感染症研究科長、サラ・フォーチュン博士だ。「『ドナルド・トランプ大統領がトニー・ファウチ博士に耳を貸さない』という記事を見る度、大統領が博士を解任する可能性が高くなるような気がするんです」

コロンビア大学の感染症の専門家、イアン・リプキン博士は、FOXを通した方が大統領にはっきりと主張出来ると感じている。「これがいつ収束するか本当にわかりません」と3月24日、博士がデブズ氏の番組で言った。ウイルスを止める最善策は隔離と封じ込めである、と述べ、ニューヨークやシカゴ、ワシントン州の厳格な自宅退避対策を称賛し、他の州もこれを見習うべきだとも言った。

ルー・デブズ氏の番組でコロナウイルス感染を明かしたリプキン博士は――「私が感染するということは、誰でも感染し得るということです」と視聴者に向かって言った――その翌日、電話で取材に応じてくれた。前の晩よりも声は弱弱しく、咳き込むことも何度かあったが、依然意思は固かった。「今回、人々が耳を貸す助言をすることが出来る、ということを学びました」と、これまでのメディアでの経験から自らの役割について語った。「ですが、この先成功するかどうかはわかりません」

その次の週、博士はFOXニュースのニール・キャビュート氏の番組に出演した。

Translated by Akiko Kato

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