映画『キャッツ』映画評:この10年で間違いなく最低作品、一体何が起きたのか?

『キャッツ』で風変わりな毛皮姿で跳ねるジェームズ・コーデン(中央)Photo by Universal Pictures


ジェリクルキャッツについて歌ったオープニングの曲は、情けを求めて泣きたくなるぐらいに観客の耳に何度も「ジェリクル」という言葉を繰り返しつらぬき、これから先にやってくる過酷な扱いの警告としての役割を果たしている。『ドリームガールズ』でオスカーを受賞したジェニファー・ハドソンは、自分には価値があると思わせる演技にかけては1番うまくやっている。これが演技なのだ! 歳をとっているが魅力のある猫グリザベラを演じているハドソンはショーで唯一記憶に残る歌「メモリー」で息切れしてしまうほどに大げさに演技をしている。ミュージカルらしいスタンダードな華麗さと心に残る正義を歌っている、ベティ・バックリーのバージョンを是非とも聴いてほしい。ベティはブロードウェイでこの役を演じた際にトニー賞を受賞した。彼女が歌うバージョンは不朽のものであり、はっきり言って記憶にしっかりと残っている。

それ以外のことは間違いなく、忘却の彼方に追いやりたいと思うだろう。舞台『ハミルトン』で天賦の才能を発揮した振付師アンディ・ブランケンビューラーにとって、ジリアン・リンによる舞台でのダンスをスクリーンに合わせて作り替えるのは重荷となっている。彼が作り出した振付は見応えのあるものかもしれないが、その真偽を確認することができない。なぜなら、フーパーがロングショットからミディアムショットやクローズアップへと激しく行き交う編集手法を用いているために、優雅な動きを見せている全身のシンプルな美しさをまったく目に留めることができないからだ。

中身の無いショーに物語の形を与えるために、監督と共同脚本家であるリー・ホールは新しいキャラクターを加えた。そのキャラクターは、バレリーナのフランチェスカ・ヘイワードが演じるヴィクトリアで、トラファルガー広場から鉄道の線路まで猫が暮らしている様々な場所に観客を先導していく役どころだ。また、ロイド=ウェバーはエリオットの既存の詩を避け、T・Sとは異なる詩人(「ブランク・スペース」や「シェイク・イット・オフ~気にしてなんかいられないっ!!」の詩を考えてみてほしい)のために新曲「ビューティフル・ゴースト」を追加した。その曲は、「メモリー」を向上させ、そしてその曲をより良くしようとした意図があったかもしれないが、そのどちらも失敗している。申し訳ない、スウィフトさん。

そして、私たちには、さまざまなスターが定番の曲のために姿を現しては消えていく映画が残される。ゴキブリと踊るジェニエニドッツ役のレベル・ウィルソンや、大げさすぎる演技で食いしん坊の猫のバストファー・ジョーンズを演じるジェームズ・コーデンが出演している。それに、注目してほしいのが、うぬぼれ屋のラム・タム・タガー役としてジェイソン・デルーロが出ている。デルーロほど有名ではないが、ローリー・デイヴィッドソンは魔法使いのミストフェリーズを演じており、彼の定番曲は実に――まあ聴いてほしい――まずまずのものだ。その瞬間はつかの間でしかない。

本作の苦痛でしかない退屈さは、その前例のない、人を食い物にしようとする恐ろしさに匹敵するであろう今後の"ブロードウェイミュージカルの映画版"を判断する目安となる。劇作家トニー・クシュナーは、受賞歴のある『エンジェルス・イン・アメリカ』で、ろくでなしの弁護士ロイ・コーンが、ブロードウェイで大ヒットしているチケットを欲しがっているクライアントに電話で媚びている場面を書いた。クライアントが「『キャッツ』」と言うと、コーンは喉に指を指して、吐く真似をする。この地獄のような大失敗の映画版に耐えなければならない人全員がそのジェスチャーを繰り返すことだろう。この大惨事となった映画はあってはならない。


『キャッツ』

監督:トム・フーパー
出演:ジェームズ・コーデン、ジュディ・デンチ、ジェイソン・デルーロ、イドリス・エルバ、ジェニファー・ハドソン、
イアン・マッケラン、テイラー・スウィフト、レベル・ウィルソン、フランチェスカ・ヘイワードほか
全国ロードショー中
https://cats-movie.jp/

Translated by Koh Riverfield

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