スコセッシとデ・ニーロが語る「我々が学んだ10のこと」

2. 『ミーン・ストリート』でデ・ニーロが語ったとりとめもない話はその場で思いついたものだった

スコセッシとデ・ニーロは『ミーン・ストリート』のワンシーンを演じて、この対談の口火を切った。これは二人が初顔合わせした作品で、ここでのデ・ニーロは(ハーヴェイ・カイテル演じる)高利貸しのチャーリー叔父さんに返済を渋って長たらしい言い訳をするようなキャラクターだった(allcinemaによると、ハーヴェイ・カイテル演じたチャーリーはデ・ニーロ演じたジョニーの友人で、チャーリーの叔父が高利貸しという設定です。要チェック㊥)。本編の撮影を開始する前にデ・ニーロはこのシーンをスコセッシとリハーサルしたのだが、デ・ニーロは自分のキャラクターの人生をその場で思いつくままに語り、スコセッシはそれをすべてメモしたという。

しかし、それから約1ヵ月後、撮影最終日にそのシーンを撮影しようとしたとき、スコセッシはメモをとったノートを忘れてきてしまった。「彼はその場で4週間前に言ったことをすべて思い出さないといけなかった」と、デ・ニーロの即興演技についてスコセッシが説明した。

3. テレンス・マリックが『沈黙〜サイレンス〜』に関する手紙をスコセッシに送っていた

スコセッシ作品では宗教と信心が強調されることが多い。その中でも2016年の作品『沈黙〜サイレンス〜』では信心がことさら強調されている。この映画を観たあとでテレンス・マリックがスコセッシに手紙を送ってきたこと、その中に特に記憶に残る文章があったことを、今回スコセッシが明かした。それは「キリストが我々に求めていることは何なのか?」だ。スコセッシはこの疑問の奥深さに気付いたという。そして「自分でどう思おうと、みんな何かを信じている」というマリックの言葉が、自分の作品全体に流れる宗教の映像描写を要約していると思った。

4. スコセッシ(と映画会社の重役たち)は最初『レイジング・ブル』の製作を渋った

デ・ニーロは映画と同じタイトルのジェイク・ラモッタの回想録を読んだあと、この作品の映画化をスコセッシに何度もしつこく直訴した。しかし、スコセッシはスポーツのことを「全く知らない」と言い続けて、何年も曖昧な態度でデ・ニーロの説得をやり過ごした(スコセッシは子どもの頃に喘息を患っていた上に、ボクシングを非常に「つまらない」と思っていた)。しかし、ラモッタの回想録を読んでみて、スコセッシはラモッタの苦悩が普遍的なことを知った。ところが、映画化する価値があると映画スタジオの重役を説得するのは困難を極めた。

「我々はこのボクサーの映画を作るつもりはない。こいつはゴキブリ野郎だ」と、会議中に重役の一人が放った言葉をスコセッシが披露した。

デ・ニーロもその会議に出席しており、この発言にデ・ニーロは「違う、彼はそんな人間じゃない」と、スコセッシが「雄弁な言葉」と呼ぶ答えで返すと、間もなくスタジオ側から『レイジング・ブル』の撮影許可が降りたという。

Translated by Miki Nakayama

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