―先ほども名前が挙がったジョセフィンさんは、あなたも敬愛するレディオヘッドの『ア・ムーン・シェイプト・プール』(2016年)や、アークティック・モンキーズ『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』(2018年)にも参加していましたよね。彼女はどういったきっかけで起用されたのでしょうか。実は、ジョセフィンは私のハウスメイトと付き合っていたんです。彼女はクラシックのバックグラウンドがあるのはもちろん、自らチェロを弾くだけでなく、本当に才能豊かな作曲家でもあるんですね。私たちがはじめてジョセフィンと一緒に仕事をしたのは教会で演奏した「All I Wanted (Live at Asylum Chapel)」で、彼女は楽曲のアレンジメントを手がけてくれたんですが、それがあまりにも素晴らしかったから私のソロ・アルバムにも参加してもらうことにしたんです。
スクウェア・エニックスのアドベンチャー・ゲーム「Life Is Strange: Before the Storm」のサントラとして書き下ろされたドーターの最新作『Music from Before the Storm』(2017年)収録曲「All I Wanted」のライブ・バージョン―昨晩のチェロ演奏も素晴らしかったです。アルバムの制作中はクラシックの音楽を良く聴かれていたんでしょうか?
片手で数えられるくらいしか聴いてないですね(笑)。制作中は自分の頭の中にノイズがたくさん渦巻いているから、それをアウトプットする作業に集中したかったので。もともとドーターでも制作中にたくさん音楽を聴くタイプではなくって、作品が完成した後で「去年は何が流行ったのかな?」ってチェックしています。だから、今が一番いろいろな音楽を聴いているタイミングかもしれません。
―では、今もっともハマっているアーティストは?
パッと思いつくのはロザリア! 私の言葉では上手く説明できないんですけど……フラメンコを基調としたサウンドで、素晴らしい才能だと思います。
昨年発表した『El Mal Querer』が世界中で絶賛されたスペイン出身のロザリアは、ジェイムス・ブレイクの最新作『アシューム・フォーム』にも参加している。―歌詞についてもお聞きしたいんですが、このアルバム全体に息づいているのは、元恋人に対しての「怒り」よりも「感謝」の方が大きいのではないでしょうか。そうですね、曲の中にはまだ怒りが残っているものもあるんですが、そういった感情もすべてこのアルバムの中に込められているので、私自身はとてもスッキリしてハッピーな状態です。
―それを踏まえ、音楽性も立場もまったく異なることは承知の上でお聞きしますが……アリアナ・グランデの「thank u, next」をあなたはどう感じましたか?実は全然聴いたことがないんです。でも、元カレを振り切って次に進む、というのは良い考えですね(笑)。
―では、別れや失恋といったシチュエーションを経験した友人のためにプレイリストを作るとしたら、エレナさんはどんな曲を用意しますか?えーっと、おそらく、何の助け(Helpfull)にも元気付け(Cheerful)にもならないプレイリストがいいでしょうね(笑)。ザ・スミスみたいに、音楽的にはアップリフティングだけど、歌詞の内容は暗いものとか……。あとはアルバムですが、ハートブレイクを描いた作品としてボン・イヴェールの『フォー・エマ・フォーエヴァー・アゴー』(2008年)も聴いてほしいかも。でも、もし今の私の気分でプレイリストを作ったら、確実にロザリアが入っちゃうから適任ではありませんね(笑)。
Photo by Hikaru Hagiwara
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