サブライムのセルフタイトルアルバムが色褪せない理由

プロデューサー、ポール・リーリーのたっての希望で、このアルバムはテキサス州オースティンで録音されたのだが、これが騒動を引き起こした。インディーズで成功したバンドの多くは、メジャーデビューに向けて大手レコード会社から出される面倒な指図に最初イライラするものだが、サブライムのメンバーによると、ノウェルは有名なプロデューサーと仕事することを喜んでいたらしい(ちなみにリーリーはButthole Surferだ)。「Santeria」のギターソロをワンテイクで完成したような成功のあとには必ず後退や挫折が続くものだ。ハイになったノウェルはそれが命取りとなってロングビーチの自宅に送られたように。

ハッポルドは「ブラッドは最高のヤツだったけど、ドラッグがあると人が違った。ドラッグをやっているときのヤツは焦点が定まっていなかったよ」と説明した。

未亡人トロイのオープンでフレンドリーな話し方には、夫の代弁者という役割を引き受けた強い決意が見て取れる。しかし、サブライムのメンバーにとっては過去の話をするのは容易なことではない。アルバム『Sublime』制作中のノウェルの精神状態についてウィルソンは話すのを拒み、「それについては話したくないよ」とだけ言った。

一方、ゴウはウィルソンよりも率直に、ノウェルの中毒を知っていたこと、バンドの未来に商業的な成功と発展の可能性が見えた途端にすべてが終わったことへの苦悩をローリングストーン誌に語ってくれた。

「あれは本当に最低だった」とゴウ。「ラフな編集が終わった直後、まだミックスも完成していなくて、大雑把な編集が終わったばかりってところで、俺たちは移動中のカーステレオや自宅でのパーティーなど、あらゆる場所でその音源を聞いていた。あのアルバムがそれまでの最高傑作だって確信があったし、あれは成功へと続くハシゴの途中の一つの到達点だった。調子は上々だったよ。それまでの苦労や努力がやっと報われると思い始めたときだった。なのに、その成功を一緒に喜ぶ親友が突然消えたんだ」と。

それから20年後、このアルバムのレガシーはどんどんパワーを増している。「Santeria」、「What I Got」、ジョージ・ガーシュインをサンプルした「Doin’ Time」と「Wrong Way」といった楽曲が、世界中のバーで演奏するバンドの定番曲としてセットリストに組み込まれているのだ。それに、Sublimeのアップピックのレゲエ・ギター、パンクとヒップホップの色合いが濃い熱いボーカルに魅了された数多くのアーティストによって歌い継がれている。そして、彼らの影響は(ノウェルが自身のレーベルと契約した)Slightly Stoopidやカナダのバンドのマジック!、マイリー・サイラスの楽曲「Party in the USA」などに見られる。また、良くも悪くも、バンドの元ドラマー、ラスMGことマーシャル・グッドマンがターンテーブルを使ったことが、その数年後にリンプ・ビズキット、リンキン・パーク、インキュバスなどが続く、ロックのメインストリームでターンテーブルを使う礎を作った。

「あれは何かを狙ったものではなかった。先駆者もいなかったしね。とにかくクールな音楽を作りたい一心だったのさ」とグッドマン。

Translated by Miki Nakayama

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