ケンドリック・ラマーの創造力とマーベルの世界観が融合、『ブラックパンサー・ザ・アルバム』レビュー

左:ケンドリック・ラマー 右:チャドウィック・ボーズマン(Photo by Kevin Winter/Getty Images for NARAS, Marvel Studios)



『ブラックパンサー』の物語には、フェミニズムが色濃く現れている。ティ・チャラを支える女性兵士の集団、Dora Milajeはその最たる例だ。そして音楽の面でも、ハイライトと呼べる楽曲の多くで女性アーティストがフィーチャーされている。憂いを帯びたラマーとシザのデュエット曲「オール・ザ・スターズ」はもちろん、胸を打つバラード「アイ・アム」には個性的な歌声が魅力のイギリス人シンガー、ジョルジャ・スミスがフィーチャーされている。ヨハネスブルグの女性ラッパー、Yugen Blakrokによる、タッグを組んだヴィンス・ステイプルズ以上の存在感を見せつけるヴァースは、今作における数多くの優れたラップの中でもハイライトに違いない。

その曲「OPPS」は、電子音と四つ打ちのビートが交錯するアップリフティングなトラックだ。共同プロデューサーとしてクレジットされているラマーの盟友Sounwaveは、本作の多くの楽曲でその手腕をいかんなく発揮している。荒涼としたムードから哀愁漂うメロディ、たくましいビート、神秘的でスペーシーなサウンドまで、SF映画らしいアフロフューチャリスティックな世界観を演出してみせている。それでも本作をまとめ上げているのは、やはりケンドリック・ラマーのカリスマ性だろう。過去10年間における最重要アーティストとされる彼にとって、今作はそのディスコグラフィーを一層充実させるものになった。

それは『ブラックパンサー』におけるコミックならではの現実離れした神話性が、ケンドリックか追求し続けるテーマと共鳴した結果だ。主人公のティ・チャラがそうであるように、ケンドリックは期待と重圧を自らの力へと変えてみせる。本作における最もエモーショナルな瞬間は、際立ってラフな最終曲「プレイ・フォー・ミー」だろう。ザ・ウィークエンドによるローファイなコーラスを擁するこの曲で、ケンドリックは抱える苦悩と月並みな思いを吐露してみせる。「世界に立ち向かい、君を敵に回し、自分自身と戦う / 俺は神に戦いを挑む 教えてくれ あといくつの試練を乗り越えればいいのか」。どこまでも人間的なその姿は、どんなスーパーヒーローよりも威厳に満ちている。


Translated by Masaaki Yoshida

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