ストリーミング時代に逆行する「ロック界、最後の重鎮」

12年ぶりの新作が待ち望まれているトゥール(Photo by Tim Cadiente)

発売延期を続けているトゥールの5枚目のアルバムは、今の時代、最もリリースが延びているアルバムとなっている。ガンズ・アンド・ローゼズの『チャイニーズ・デモクラシー』(前作から17年ぶりのスタジオ・アルバムだった)という先例があるが、それほど待ってまでも聴くべきバンドである理由を明かそう。

2018年4月は彼らが最後のアルバム『10,000デイズ』をリリースしてからちょうど12年目の節目となり、次回作をリリースすると発表してから10年になる。この間、ジャーナリストやファンたちにとって、次回作の発表タイミングを予想することがある種の楽しみとなってきた。漏れ聞こえてくる情報は矛盾ばかりで、人々を困惑させるだけだった。

2017年末にはドラマーのダニー・ケアリーがあるインタビューで「トゥールの5枚目のLPが2018年に出るのは“確実”だ」と述べ、その一方で1月に、「夏のリリースは早すぎる」と言ったファンの言葉を聞いたヴォーカルのメイナード・ジェイムス・キーナンが、わざわざ「いや、今年の夏のリリースはない」と訂正している。

そんな彼らの世界が立ち止まっているわけではない。トゥールは膨大な過去作品の楽曲でセットリストを組んで、気が向いたときに気が向いた場所でアリーナ・クラスのライブを行うのだ(フェスティバルのヘッドライナー以外で彼ら最大のライブは去年行われている)。キーナンはワイン製造者として成功し、複数のアルバムで構成するプシファー・プロジェクトを立ち上げ、14年ぶりにア・パーフェクト・サークルのレコードまで録音している。

ドラマーのケアリーは賑やかなフュージョン・プロジェクト、Volto!で演奏し、海の男がテーマのスーパーグループ、Legend of the Seagullmenでレコーディングを行っている。ギタリストのアダム・ジョーンズはTVゲームで遊び、Instagramでリハーサルをしている風なポストをアップする。ベーシストのジャスティン・チャンセラーはインタビューでトゥールは着実に曲作りを進めていると断言するのだ。

現在までリリースされているトゥールの4枚のアルバムには、過去25年間で最もリッチで、聴く者を夢中にさせるロックが収録されている。外から見る限りではカルト・バンドという風情の彼らだが、実はメインストリームの絶対勢力の一つなのだ。トゥールの3作目と4作目は初登場1位でチャートインしている。その前の2作目は順位を落としたとはいえ、初登場2位だ。

この4枚のアルバムの内容を考えたとき、彼らがアルバムを聴いてもらうために強要したファンの時間と集中力は理不尽以外の何ものでもなく、ファンたちは相当の時間を彼らの音楽に費やしたはずだ。トゥールの音楽は暗くて、ひねくれているだけではない。強烈なまでに野心的で、見開きジャケットの2枚組LPが多く出ていた時代が終わった後には一切登場しなかった類いの音楽だ。

Translated by Miki Nakayama

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