伝説のドラムマシンTR-808が起こした、ポップス史における8つの革命

Photo by Courtesy of Atlantic Records


5. あらゆるスタイルの音楽にフィットした

多様なサウンドを誇る808の可能性は無限大と言っていい。「ある時はリムショットの音がお気に入りだった」ベイカーはそう話す。「タムや他の音にハマッた時期もあった。それぐらいあらゆる音に個性があるんだ。カウベルの音は使えないと思い込んでいたけど、そのサウンドを使った誰かのレコードを耳にしてブッ飛ばされる、そういう一筋縄ではいかない魅力があるんだよ」

当初808はパーカッションとして使用されるケースが大半だった。しかしリック・ルービンが、ディケイを最長に設定することでキック音のサウンドをベースとして使用する手法を生み出した。このテクニックはラップグループのオリジナル・コンセプトや、マイアミ・ベースのプロデューサーたちの作品によって広く認知されるようになった。

6. ビートを無限に繰り返すことができた

808は奇妙なサウンドを自在に生み出すことができたが、同時にシンプルなビートを延々と鳴らし続けることもできた。「単調なリズムを10〜15分間キープできるドラマーなんていないからね」フィル・コリンズは本作でそう語っている。「普通のドラマーなら途中で飽きちゃって、いろいろやり始めるはずさ。でもドラムマシンは電源が入っている限り、同じビートを無限に繰り返すことができる」このコンセプトはヒップホップにおけるループの美学と見事にマッチし、またテクノやハウスのプロデューサーたちが一般的なポップソングよりもはるかに長いダンストラックを生み出す原動力となった。

7. 新たなラップスタイルを生み出した

『プラネット・ロック』にフィーチャーされているMCたちは、当初808主導のビートにとまどったという。「ラッパーたちは困惑してたね」ベイカーはそう話す。「耳にしたことがないタイプのビートに、どう反応していいかわからなかったんだ。彼らはリリックを修正するために出直さないといけなかった。最初インストの状態だったのはそれが理由さ。アップテンポなビートに慣れていなかった彼らは、結局テンポを半分に落としてラップしないといけなかった。今じゃ当たり前になってるけど、当時はそうじゃなかったんだ。RUN-D.M.C.は『イッツ・ライク・ザット』で、あのラップスタイルを完全にパクってるね」

8. ジャンルの壁を破壊した

あらゆるスタイルの音楽に取り入れられた808のサウンドは、ジャンルという概念を無効化していった。本作に登場するリル・ジョンは、スマッシュ・ヒットを記録したアッシャーの『Yeah』の制作についてこう語っている。「R&Bのシンガーが808サウンドに合わせて歌う、そういうダンスシングルにしたかった」彼はそう話す。「その2つを融合させたケースは過去になかった。あの曲はゲットー育ちのゴロツキどもと、ポップスターに夢中なやつらの両方にアピールしたんだ。バックグラウンドがまったく異なる人々を結びつける、そういう至難の業をやってのけたんだよ」

Translation by Masaaki Yoshida

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