伝説のドラムマシンTR-808が起こした、ポップス史における8つの革命

Photo by Courtesy of Atlantic Records


1.    誰もがプロデューサーになれる可能性を生み出した

808でビートを組む上で、音楽的な素養はまったく不要だ。リスクを恐れない冒険心さえあれば、誰でもハードで奇妙なビートを生み出すことができる。リック・ルービンの初プロデュース作、T・ラ・ロック・アンド・ジャジー・Jの『イッツ・ユアーズ』を生んだのも808だった。「俺はヒップホップヘッズだった」本作でルービンはそう語っている。「でも俺が好きだったレコードは、当時のクラブで耳にしてたサウンドが反映されてなかったんだ」同トラックを生み出した背景について、彼はそう語る。「俺には作曲の知識なんてかけらもなかった」そう話す彼が必要としたもの、それが808だった。

2. 型破りなプロデューサーたちが出現した

「型にはまるのを嫌うプロデューサーたちから絶大な支持を集めたんだ」ベイカーはそう話す。「当時のプロデューサーの多くは808のサウンドを聞いて、『全然ドラムに聞こえないそんなガラクタ、一体誰が使うんだ?』って言ったもんさ。808を愛用したプロデューサーたちは逆に、全然ドラムっぽくないサウンドが最高にクールだって感じてたんだよ」


3. ポップ・ミュージックにかつてないパワーをもたらした

808サウンドを広く世に知らしめた初のレコードは『プラネット・ロック』だった。「(808は)普通の環境じゃ聞こえないローエンドを鳴らすことができた」ベイカーは本作でそう語っている。「そうと知らずにクラブでかけたりして、皆スピーカーを飛ばしたもんさ」そのパワーを存分に生かした『プラネット・ロック』が誕生した瞬間、彼はそれが音楽史に残る作品となることを確信したという。「家に帰るなり嫁にこう言ったんだ。『今日俺たちは音楽の歴史の新たな扉を開いた』ってね」彼は本誌にそう語っている。「誰も聴いたことがないサウンドを生み出したって感じたよ。まだラップを乗せてない状態だったけど、それが世界を揺るがすことを俺は確信してた」

4. ポップスにおける空間の解釈を一変させた

1979年に行われたレクチャーで、ブラインア・イーノはポップ・ミュージックのターニング・ポイントについて語っている。「50年代のレコードを聞いてみるといい」彼はこう続ける。「メロディに重点が置かれているのがはっきりとわかるはずだ。メロディが強調されるようにミックスされていて、リズムセクションはごく控えめに鳴っている。しかしスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの『フレッシュ』以降、ベースとドラムを中心とするリズムパートが前面に押し出された、以前とは真逆のミックスが一般的になった」

ドラムマシンを取り入れるプロデューサーが増えていくにつれて、リズムを強調する傾向はますます加速していった。「808はまったく新しい音空間を生み出した」デーモン・アルバーンはそう話す。「ベースとスネアの関係性が、それまでとはまったく異なるものになったんだよ」

「確かに808のローエンドは信じられないくらいパワフルだ」ベイカーはそう話す。「でも夏のビーチで『プラネット・ロック』を爆音でかけたら、1マイル先でも聞こえるのはハイハット音だ。ローエンドは無理かもしれないけど、ハイハットの音はそれぐらい響くんだよ。まるで空気を切り裂いていくかのようにね」


「808は音楽の歴史を塗り替えたんだ」ー アレックス・ノワイエ(左、右はディレクターのアレクサンダー・ダン)

Translation by Masaaki Yoshida

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