ボビー・コールドウェル、20歳下のジャック・スプラッシュによる奇跡のユニット『クール・アンクル 』結成秘話

アルバム収録曲の中でも異彩を放つ、ヒップホップとラウンジ・ロックのマッシュアップかのような『ロンリー』は、本作のハイライトのひとつだ。同曲が完成した日、コールドウェルはスタジオで適当に「遊んでいた」のだという。「何となくギターを弾いていたら、ザ・ポリスっぽい面白いオープンチューニングを思いついたんだ」(インディーロックバンド、ヤックの『シュック・ダウン』を思わせる部分もあるという)それでいて、同曲のライトなビートとパワフルなベースラインは、まぎれもなくモダンなヒップホップにインスパイアされたものだ。与えたいと願いながらも与えられることを望む、揺れ動く気持ちをコールドウェルは歌ってみせる。「君は孤独なのかい? 誰かを必要としているのかい? 君を幸せにできるのは僕だけだと言ってくれ」

本作には収録されなかった、「風変わりな」曲が他にもたくさんあるのだという。「僕らは新しいことに挑戦するアーティストやプロデューサーをリスペクトしているからね」スプラッシュはそう話す。「アルバムには収録されなかったけど、すごくクールで実験的な曲がいくつかあるんだ。でもそれを収録したらボビーのファンがすごく怒るだろうから、身を切る思いでアルバムに収録するのを諦めたんだよ。808のドラムサウンドとボビーの歌が絡む曲なんて、彼のファンは聴きたくないだろうからね」


スプラッシュはクール・アンクルのアルバムをきっかけにして、若いリスナーたちがコールドウェルの過去の作品に興味を持ってくれることを期待しているという。「特に初期の作品には、歴史に残る名曲がたくさん収録されているからね」そう話すスプラッシュに、コールドウェルはこう返した。「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。今度ディナーをご馳走するよ」そのテーブルにはきっとジャックダニエルも並んでいるはずだ。

Translation by Masaaki Yoshida

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