ボビー・コールドウェル、20歳下のジャック・スプラッシュによる奇跡のユニット『クール・アンクル 』結成秘話

ユニットをクール・アンクルと名付けたふたりは、それぞれのツアーやプロデュース業の合間を縫ってはスタジオに入り、セッションを繰り返した。「汚いガレージで活動を始めたばかりのバンドに入ったような気分だったよ」スプラッシュはそう振り返る。「お互いオープンな気持ちで、風変わりなアイディアをたくさん出し合ったんだ。何の縛りもない、まさにゼロからのスタートだったんだよ」ジャックダニエルをこよなく愛するという共通点も、ふたりの距離を縮めてくれたと彼は話す。「ウイスキーを飲んでジャムってるうちに、いいヴァイブが生まれていった。いい気分のまま歌詞を書きながら、ボビーはこんな風に話してた。『まだジャックダニエルには程遠いが、ミケロブよりはマシになったな』」

スタジオでは常にテープを回していたとスプラッシュは話す。「ボビーはジャズマンでもあるんだ」彼はそう話す。「時々即興で何かを弾き始めるんだけど、それが最高にクールなんだ。気の向くままに弾いてるだけだから、途中で全然違う方向に行き始めたりするんだけど、その度に僕が『さっきの感じで続けて!』って声をかけてた。でも彼はいつも『さっきの感じってどんな感じだっけ?』みたいな様子だったよ」

クール・アンクルのデビューアルバムいは、そのセッションから生まれたグルーヴが数多く収録されている。アルバムは短いイントロで幕を開け、続くメイヤー・ホーソーンによるヴァースとコーラスを経て、シルキーで憂いを帯びたコールドウェルの歌声が待ちわびたと言わんばかりに響きわたる。「君のことを考えないようにしてた 僕にはもう大事な人がいたから でも結局僕は誘惑に負けてしまった」 楽曲の巧妙なアレンジは、コールドウェルのデビューアルバム収録曲『キャント・セイ・グッバイ』にも決して見劣りしない。DJミックスを作るとすれば、1980年発表の『オープン・ユア・アイズ』の次曲には、ジェシー・ウェアを迎えた『ブレイク・アウェイ』がもってこいだろう。彼女の艶やかな歌声は、哀愁漂うボビーの声を一層際立たせている。

Translation by Masaaki Yoshida

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