また、彼らのアルバムのアートワークは常に大げさを超えて、異常なまでに派手だ。『Reign in Blood』から1990年代の『Seasons in the Abyss』まで、ヒエロニムス・ボス風の地獄絵図をアーティストのラリー・キャロルが描いている。シングル「Seasons in the Abyss」は骸骨が浮かぶ輸血パック仕様だった。アルバム『Divine Intervention』のCDには「Slayer」と腕に彫ったファンの写真が使われていた(シングル「Serenity in Murder」でも血で書かれたバンド名が滴り落ちる男の背中の写真が使われていた)。『God Hates Us All』のジャケットは釘の刺さった血染めの聖書である。
スレイヤーのスタジオ・アルバムがヘヴィメタルのレコーディング方法を変えたのは確かなのだが、ライブでの彼らのリフはレコードよりも衝撃的で、アラヤのヴォーカルは悪魔が乗り移ったように聴こえる。スレイヤー公認のライブ・レコード2作、1984年の『Live Undead』と1991年の『Decade of Aggression』を聴いてほしい。
『Live Undead』の「The Antichrist」は、観客の歓声が上がるに従って、すべての音が弦から観客の上に滴り落ちるような感覚を覚えるはずだ。また『Decade of Aggression』の「Hell Awaits」では、ドラマーのデイヴ・ランバードのリズムがルーズにスウィングしている。これはスタジオ盤ではプレイされていない音だ。当時ライブで必ず演奏していた「Angel of Death」であっても、そこはかとない不安定さが感じられる。もちろんサウンドはレコードよりも迫力があり、スレイヤーが最高のメタルバンドになった理由がはっきりと見て取れるのだが、彼らの実力を疑う人は『Decade of Aggression』のライナーを見てほしい。「他のライブ・アルバムと異なり、これにはスレイヤーのライブ演奏だけが収められている。オーバダブは一切ない」と書かれている。そう、正真正銘のライブ・サウンドなのだ。