ザ・ラスト・ディナー・パーティーが語る、UK最重要バンドの優美な反乱

Photo by Cal McIntyre

ザ・ラスト・ディナー・パーティー(the Last Dinner Party)が、本日6月21日に日本盤がリリースされたデビューアルバム『Prelude to Ecstasy』を携えてフジロックで初来日。7月25日には恵比寿リキッドルームで単独公演も開催される。ローリング・ストーンズの前座を務め、期待の新人リスト「BBCサウンド・オブ・2024」第1位を獲得。勢いの止まらない5人組がバンドの美学を語る。


ザ・ラスト・ディナー・パーティー(以下、TLDP)のフロントウーマン、アビゲイル・モリスが結婚披露宴のなまいきな子どものようにステージ上でくるくると回り、彼女の衣装のフリルもそれについていこうとする。昨秋、バワリー・ボールルームの外の路上には、あらゆる恥が堂々と置き去りにされていた。

ロンドンを拠点に活動するこのインディーロックバンドが、荒々しい愛と古き良き情交への抑えきれない頌歌であるデビューシングル「Nothing Matters」を演奏すると、オーディエンスは一斉に“何も問題ないみたいに、あなたをファックする”と大合唱した。モリスの隣では、リズム・ギターのリジー・メイランドが強烈に魅力的な野球帽をかぶって頭を振っている。もうひとりのギタリストであるエミリー・ロバーツはレースのロンパースを着ている。その横にはベースのジョージア・デイヴィーズ、鍵盤はスパンコールに覆われたオーロラ・ニシェフチだ。この曲はアンコールの終わりに披露されたが、彼女たちと一緒に咆哮する何百人もの人々はまだ家路につく準備がまったくできていない様子だった。



少女の頃を思い起こさせるバンドである――良い意味でも、そして間違いなく悪い意味でも。デイヴィーズのギターのネックで揺れるサテンのリボンにすらも、「ザ・マン(支配的な男社会やその価値観)」によって自分が何者であるのか告げられる前の若々しい衝動や、告げられた後のそうしたメッセージへの抵抗が感じられる。ステージ上では、彼女たちは礼儀正しさを振り払うことで愛されている。ステージを下りると、彼女たちは女性蔑視に溺れた男たちを叱責しなければならなかった。2024年においてもなお、敢えてコルセットを着用して、黙っていることを拒否すれば人生はそんなものだ。だが幸運なことに、彼女たちにはお互いの存在がある。

「ステージの上でも下でも私たちはとても仲がいいから、グループでパフォーマンスしているとある種の安全を感じるんです」と、モリスはこのライブの数週間後、Zoomで語った。「重要なのは、私たちの誰も演技をしていないということ。誰ひとりとしてキャラクターを演じていない。ただ楽しんでいるだけ、本当に」 。

バワリー・ボールルーム公演のライブ写真

TLDPが結成され、5人組として活動をはじめてから、まだ3年も経っていない。運命の出会いはモリス、メイランド、デイヴィスがキングス・カレッジで学びはじめる直前に訪れた。18歳の3人は他のアーティストのライブに一緒に行くことでたちまち親密になった。少し遅れて、ロバーツとニシェフチが現れた。2021年11月にジョージ・タヴァーンで初ライブを行ってから1年足らずで、ハイド・パークでローリング・ストーンズのオープニングを務めた。また、グラストンベリーやレディング、リーズなどのフェスティバルでは、わずか3曲しかリリースしていなかったにもかかわらずテントを満員にした。

イギリスでの猛スピードの成功によって、彼女たちが「インダストリー・プラント(業界の仕込み、ゴリ押し)」だという噂が広まった。彼女たちはこれを「汚い嘘」だとして否定している。なぜこれほどまでに急速にここまで上り詰めたのか、その答えはもっとシンプルだ。少しの運、たくさんの才能と練習、そして地元のパブで演奏した数え切れないほどの夜。

とはいえ、彼女たちはオーディエンスの急増に驚いている。「ものすごくありそうにないことで不思議」とメイランドは言う。「怖いけど、私たちは5人だから気後れしない。もしソロ・アーティストだったら、いまごろはもうすでにヒビが入ってたと思う。でも、私たちはみんな揃って狂ってる感じ」。

「この仕事にはやることがたくさんある……たくさんの会議や会話、ステージで演奏する以外のことをたくさんやってます」と、ディヴィスは付け加える。「でもステージこそが私たちが完全にクリエイティブ・コントロールを握れる場所なんです。踊り狂っているのは私たち」。

Translated by Momo Nonaka

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