粗品が語る「アンチ現代音楽」の真意、初アルバムに込めた2つの大義

─では収録曲について、既に発表されている楽曲の話から聞かせください(※インタビューは3月中旬に実施)。「宙ぶらりん」は、曲を作ってから発表するまでに1年ほど温めていたそうですね。

粗品:あ、そうでした! あくまでメロディだけ、ですけどね。確かに曲の構成自体は1年前にできていましたね。

─もともとアルバム一発目に解禁する曲として準備をしていたのでしょうか。

粗品:そうですね。粗品初歌唱楽曲として「こういうのを歌っていくよ」と皆さんに見せしめる意味もあって選びましたね。

─そもそも「宙ぶらりん」が生まれたはきっかけは?

粗品:まず、ああいう曲構成に憧れていたのがあるんですね。最初にギターと歌だけで始まり、ドラムとベースが入っていって、Aメロとサビだけという……言ったらブルーハーツの「リンダリンダ」なんですけど。まあ「リンダリンダ」はね、サビじゃなくて「ドブネズミにみたいに〜」って最初にAメロをアカペラで歌っているんですけど、あれに似た構成はやっぱり憧れますね。あと、最近は言いたいことをだんだん言えなくなってきて。僕は結構言うてる方なんですけど、そんな僕でも仕事していて思うんですよ。だからこそ「こいつ腹立つな」とか「こいつキモいねん」っていうことを、遠慮なく歌に乗せたいなと思ったのがきっかけですね。



─この曲は「こいつにはなりたくない」とか「こういう人間が嫌いだ」という反発心が強い印象がありまして。

粗品:うん、そうですね。自分のステータスとかポジションで思う「あの先輩キモいな」ということやから、最初はあんまり共感してもらえないんかなと思って作ったんです。でも、お客さん(リスナー)の反響を見ると意外に共感してもらえてて。特に嬉しかったのは、40代くらいのめっちゃ年上の人から「『宙ぶらりん』に触発されて会社を辞めてきました」というDMが来て。年上も焚きつけられたかと思って、めっちゃ嬉しかったです。

─この曲を聴いていると粗品さんに「お前はこうなってくれるなよ」って言われてるような気持ちになって、思わず背筋が伸びるんですよね。

粗品:はいはい! 確かにそういうことですよね。「背筋が伸びた」って近しい人にも言われましたね。「ああ思われへんようにするわ」って。どっちでもいいんですけどね。茨の道というか修羅なんで、僕が歩んでいるのは。いわば“激尖り道”ですよ。「背筋が伸びた、ああならんようにしよう」と思ってくる方もすごいし、逆に「粗品はこうやけど、俺は自分の尺度で頑張ろう」とか「へー、こんな考え方の奴もおんねや」という楽しみ方でもいいと思って作りましたね。

─ほかの楽曲も然りですけど、特に「宙ぶらりん」は粗品さんの強者感をすごく感じるんですんですね。

粗品:あぁ、はいはいはい(笑)。

─この強靭なメンタルはどこで培われたのかが気になるんですよね。

粗品:それは結果と実績ですね。お笑いという世界に身を置いて、僕はあまりに成し遂げてしまい過ぎたので。まあ、それはちょっと上から物言わしてもらうよっていう。大口を叩くに足る実績がついてきてしまっている、ということですね。自信満々やしっていう。

─実績を作る前から、粗品さんはブレない強さを持っている気がするんですよね。

粗品:ハハハ、どうなんですかね? 確かに、若い頃から僕はこの感じなので、結果は後からついてきたって感じなんでしょうけど。だからこそ、このタイミングでのリリースなんですよね。「M−1グランプリ」で優勝する前に、こんな曲を出しても「何言うてんねん、こいつ」と思われるだけなんで。ある程度は黙らせられるようなすごいことをいっぱいしてから出したかったんですよね、この曲を。だからタイミングはバッチリでした。

Rolling Stone Japan 編集部

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