ライター志田歩が語る、PANTA & HALが追求した頭脳警察とは違うアプローチ



今流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

去年の6月14日に渋谷のduo MUSIC EXCHANGEで生前最後のライブが行われて、そのときにミッキー吉野さんがずっと一緒だったんですね。楽屋で3時間話し込んでいたということを聞いて、ミッキーさんに何を話していたんですかって訊いたら、ずっと音楽の話をしてたんだよと。それも音楽もロックだけじゃなくて、クラシックやオペラのことまでも彼は熱く語っていたという話をしていました。

PANTAさんの曲、アルバム、ずっと辿ると世界史とか日本史、それから古典。いろいろなものが背景になっているんだなということにあらためて気づくんですね。教科書に載っていない歴史が、彼の歌になっている。教科書というのは1つのオーソライズされたと言いますか、認められたと言いますか。誰かがこれはいいですよと言って許可したものが書かれているわけで。削られてきたものがたくさんあるわけですね。

本当のことというのは、削られた中に残っていたりすることの方が多くて、PANTAさんはそれを作品にしようとしていた。70年代初期の頭脳警察のときはそれが目の前の出来事としてありましたから。眼の前で大学が焼け、街が燃え、そして学生が機動隊に捕まっていくという光景が繰り広げられていて、それがたまたまそのときの彼の目に移った。それが歌になっていたわけですけども、その後の歴史がずっとあるわけですね。彼は頭脳警察を解散してそれだけじゃないんだよってことを文献等、いろいろな残された資料とか作品を辿りながら、自分の歌うべきことを探してきたんだなというふうにあらためて思ったりしました。それが『マラッカ』。そして『クリスタルナハト』というアルバムにもなっているんですね。

そういう話を志田さんとしてみたいなと思ってお招きしたら、彼が書いた近著『THE FOOLS MR. ロックンロール・フリーダム』。THE FOOLSというバンドのことを書いた本なのですが、THE FOOLSが頭脳警察と一緒にやっていた。話を聞いて初めて知りましたね。彼はそのことを本に書いていると言ってましたけども、あらためて読んでみようと思いました。そうやって繋がるものは繋がっていくんだなと思いながら来週、今の頭脳警察を支えている若いミュージシャンをお招きして、PANTAさんの話をしてみたいと思います。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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