「性的暴行の被害は他の人種の2倍」アメリカ先住民女性の変わらぬ現実

キュイザンス姉妹もブラックエルクさんと同じように、自分たちが犯してもいない罪で不当に起訴され、有罪判決を受けたのだ。1993年2月、姉妹は76歳のアンソニー・ドルフさんを殺害した罪で終身刑を言い渡された。

警察は真犯人の正体を知っていたにもかかわらず、オデリアさんとネリッサさんは有罪判決を受けた。警察は姉妹の従兄弟にあたるジェイソン・キーシェイン(当時14歳)の自供を録音していた。キーシェインは証言台でも同じ内容を繰り返した。自供によると、彼は姉妹と外出していたが、ドルフさんが姉妹に言い寄り、ドルフさん宅で一緒に酒を飲んでいたという。

なくなった金が原因でドルフさんと口論になったため、殺害したとキーシェインは自白した。姉妹は殺害に関与していないとも供述した。

この時の供述を録音していたにもかかわらず、警察はキーシェインが姉妹の関与を吐いたと嘘をつき、詰問した。裁判資料によると、拘束時間は司法省の命令で法律上24時間までと決められているが、これに反して姉妹は5日間も留置所に勾留された。尋問に当たった警察官はみな白人男性で、弁護士の同席はなかった。録音機材も準備されたが、警察は事情聴取をうっかり――あるいはあえて――録音していなかった。姉妹は圧力に屈し、アンソニー・ドルフさん殺しの自供調書に署名したという。殺人事件の冤罪の原因で一番多いのが、こうした虚偽の自供だ。

「体格のいい毛むくじゃらの白人男性が姉妹をひっきりなしに留置所から連れ出し、尋問しては勾留し、また尋問するということを何日も繰り返しました」と語るのは、冤罪被害者を救済する団体「イノセント・カナダ」の創設ディレクター、ジェイムズ・ロックイヤー氏だ。有罪判決以降、姉妹の弁護人も務めている。「警察は自分たちの望みをよく分かっていた。自分たちのしていることも承知していた。ドルフ氏殺害につながるようなことを、2人の若い女性に言わせなくてはならなかった……威嚇戦術が行われていたことは疑いようもありません」。

警察が供述内容だと言う書面にもとづき、1年後オデリアさんとネリッサさんは全員白人の陪審員から有罪判決を言い渡された。当局に逆らってはいけないと叩きこまれたキュイザンス姉妹は、裁判でも証言台で警察に反論するのを恐れた。有罪が確定した当時、2人はそれぞれ21歳と18歳だった。その後30年間近く、姉妹は無実を訴え続けた。

Akiko Kato

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