「性的暴行の被害は他の人種の2倍」アメリカ先住民女性の変わらぬ現実

社会制度や法体系に刷り込まれた組織的人種差別や性差別に直面する先住民女性には、しばしば悲惨な結果が待ち受けている。私もジャーナリストの活動を通じて、またLava for Good配信のpodcast「Wrongful Conviction」の司会者として、こうした危機を何度となく見聞きしてきた。ブラックエルクさんの事件を知ったのもpodcastがきっかけだった。アメリカでは、先住民の女性や少女の殺人事件は他の人種の10倍も多い。連邦司法省研究所の報告書によると、先住民女性は5人に4人、あるいはそれ以上の割合で暴力の被害に遭っている。アメリカインディアン国民会議(NCAI)によると、先住民女性がレイプや性的暴行の被害に遭う確率は他の人種の2倍だ。

人口全体に占める割合はごく少数であるにもかかわらず、カナダやアメリカの女性受刑囚は圧倒的に先住民女性が多く、受刑囚のほぼ半分を占めている。さらに言えば、過去30年間に冤罪が認められた女性のうち約71%は、犯してもいない罪で収監されていた――ブラックエルクさんもその1人だ。

これは制度全体が何世代にもわたって先住民を不当に扱い、苦しめてきたひとつの例に過ぎない。アメリカやカナダでは、今でも「先住民居留地」という形で人種隔離政策が行われている。

居留地が設立された当時、植民地政策を進める国々は力づくで原住民を所有地から追い出し、制限された狭い土地の中だけで暮らすよう強制した。だが先住民は、自分たちが暮らす土地――収入源や自立性の源となる資産――の所有権を認められなかった。こうして財政的権利を奪われた先住民は、他のどの人種よりも貧困率が高くなった(全米平均のほぼ2倍)。

だが、こうした先住民に対する「よそ者扱い」は居留地に限った話ではない。ネイティブアメリカンの若者を家族から引き離し、「寄宿学校」に入れるということが1世紀以上も行われた。こうした学校の目的は強制同化で、子どもたち――最年少はわずか4歳――は生まれた時の名前、長髪、母語や文化を奪われた。

このような寄宿学校で身体的・性的虐待を経験した子どもも多い。1990年代末に最後の寄宿学校が閉鎖されたが、その後アメリカやカナダの寄宿学校周辺では、先住民の子どもの集団墓地が発見されている。

オデリアさんとネリッサさんのキュイザンス姉妹は、カナダのサスカチュワン州にあるソルトー族キースクース・ファーストネーションの出身で、子どもだった70年代と80年代にむりやり寄宿学校に入れられた。幼少期の心理的トラウマで、2人は麻薬や酒に安らぎを求めるようになった。ネリッサさんの場合は身体的な傷も伴った――寄宿学校でひどく殴られたため、脊柱側弯症になってしまったのだ。

Akiko Kato

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