「性的暴行の被害は他の人種の2倍」アメリカ先住民女性の変わらぬ現実

刑務所から釈放され、審理無効請求の結果を待つオデリア・キュイザンスさんとネリッサ・キュイザンスさん(COURTESY OF ODELIA QUEWEZANCE AND CASSI BLACK ELK)

脆弱な立場の女性が人種差別的な起訴の標的にされるのを防ぐために対策を講じるべき、とピューリッツァー賞受賞者でジャーナリストのマギー・フレラングが本誌に寄稿記事を寄せた。

【動画を見る】ほぼ全裸の女性が一方的に殴られる姿を捉えた映像

2022年2月19日、ノースダコタで暮らす先住民女性カサンドラ・ブラックエルクさん(当時29歳)が目を覚ますと、隣で寝ていた3歳の娘のスターライトちゃんが身動きしていなかった。母親なら誰もが恐れる悪夢だ。だがブラックエルクさんにとっては、ほんの序章に過ぎなかった。

警察は10分もしないうちにブラックエルクさん宅に駆けつけると、彼女を尋問し始め、我が子に危害を加えたいきさつを話せと迫った。誰も娘に危害など加えていません、と彼女は答えた。上の子2人を寝かしつけ、末っ子にミルクを与えてから自分の隣に寝かせました。翌朝6時ごろに目を覚ましたら、娘は冷たくなって身動きしていなかったんです、と。

納得しない警察官はブラックエルクさんをビスマルク警察署に連行した。1回目の事情聴取は苦痛の3時間だった。ブラックエルクさんの話では、警察は彼女を威圧して、誰かがスターライトちゃんに危害を加えたはずだと主張した。現場に駆けつけた警官は医療訓練を受けておらず、遺体の検視結果もまだ行われていなかったにもかかわらず、警察は赤子の身体にあざやキズがあったと告げた。

警察のいうことが信じられなかったブラックエルクさんが検視報告書を見たいと要求したところ、警察からの圧力は余計に増した。スターライトちゃんに危害を加えたことを自白しないと、残る2人の子どもを取り上げるぞと警察は脅した。最終的には弁護士からも、2人の子どもを手元に残しておきたいなら育児放棄の重罪で有罪を認めたほうがいいと勧められた。ブラックエルクさんは司法取引に応じ、懲役5年が言い渡された。

ブラックエルクさんが再三請求したにもかかわらず、スターライトちゃんの検視報告書は見せてもらずにいた。弁護士にも死因報告書を入手するよう何度も頼んだが、無視された。その後の裁判資料によると、弁護士は「後で何とかする」と彼女に伝えていた。

悲しみに沈んだブラックエルクさんは、当局や弁護士から不当な扱いを受けたことで、自分の苦しみを気にする人は誰もいないのだと感じたという。「スターライトがなぜ死んだのか、誰も気にしていなかったと思います」。

ブラックエルクさんの有罪が確定し、刑務所に収監された後、ようやく最終検視報告書が公開された。そこには彼女がさんざん訴えてきたことが結論づけられていた。スターライトちゃんの死因は虐待や育児放棄ではなく、乳児突然死症候群(SIDS)だったのだ。

Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE