恋人と愛犬をナイフで惨殺した女性、大麻乱用と精神錯乱の相関関係 米

ブリン・スペイシャーと弁護士 ベントゥラ郡役所にて(JUAN CARLO/THE STAR/USA TODAY/IMAGN)

アメリカで、若い女性が大麻を吸い、交際相手を100回以上も刺し殺した後、同じナイフで自分と愛犬を刺した。なんとも痛ましく恐ろしい事件は、その残忍さゆえに大々的に報道された。問題の女性はのちに2年間の執行猶予と100時間の社会奉仕活動の刑を言い渡され、よりいっそう注目が集まった。

【写真を見る】「異臭がすごい」ドロドロの臓器でいっぱいだった地下室

今回の恐ろしい犯罪とそれに付随する情状酌量は、大麻とその影響が問題になった際に――とりわけ大麻を合法化する州が増えている中――危険な前例になりかねないと検察は主張した。だが弁護団も主張するように、被告が大麻を吸ったいきさつや理由が完全に明らかになったわけではない。

2018年に当時26歳だったチャド・オメリアさんを意図せず殺害した罪に問われていたブリン・スペイシャー被告(33歳)は、先月末に判決を言い渡された。すでに昨年12月に有罪が確定し、懲役5年前後が求刑されていたが、カリフォルニア州ベンチュラ郡上位裁判所のデヴィッド・ウォーリー判事が下した刑罰は保護観察と社会奉仕活動だけだった。弁護側と検察の判断も被告が錯乱状態に陥ったのは大麻が原因だったというもので、検察はスペイシャー被告の起訴を殺人罪から過失致死罪に引き下げた。

「非常に危険な前例を作ってしまった」。裁判を担当したベンチュラ郡地方検事局のオードリー・ナフジガー検事はNBCにこう語った。ローリングストーン誌の取材でも、「事件の担当検事として、また正義のために29年間戦ってきた者として言わせていただくと、この刑罰は刑事司法制度をバカにしています……私が知るあらゆる過失致死事件の中でも、今回はもっとも非道かつ残忍です」。

オメリアさんの遺族も動揺している。「刑務所には大麻を所持していただけで収監されている人もいるのに。年齢や肌の色、職業をもとに法律を適用することがあってはなりません」。チャドさんの父親ショーン・オメリアさんはデイリーメール紙にこう語り、スペイシャー被告が若い白人女性である点を指摘した。「あの大麻はサウザンドオークス市のあちこちで売られていますが、そこら中に死体だらけという光景にはなっていません……この女性の体質にどこか特異な点があって、それが原因でああいうことになったのは明らかです」(検察および弁護側が雇った専門家がそれぞれ精神鑑定を行ったが、いずれの場合も精神疾患や暴力的傾向の徴候は見られなかった)。

だがスペイシャー被告の弁護団に言わせると、情状酌量や精神疾患で済むほど単純な話ではない。今回は様々な要因が重なった特異な事件であり、大麻を単なる「鎮静」薬だと考える人々にある種の警鐘を鳴らしていると弁護団は言う。「検察は裁判で、今回の事件を飲酒運転になぞらえました」と、ロバート・シュワルツ弁護士はローリングストーン誌に語った。「状況は違います。ブリンさんは吸引パイプの中身を知らなかった。そこが一番のポイントです。今回の事件のキモは、特殊な状況です。だからと言って、メディアでも指摘されているように、ハイになって(誰かを殺しても)いいと言うわけではありませんが」。

Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE