「なぜ校舎に入らなかった?」...米ロブ小学校銃乱射事件、遺族の悲しみと怒り

2022年6月17日、テキサス州ユバルティ市ロブ小学校の校門は花や供え物に囲まれた(BRANDON BELL/GETTY IMAGES)

米・ロブ小学校での銃乱射事件発生からほぼ2年、司法省は警察当局の対応が「至らなかった」とする報告書を公表した。

【動画を見る】犯人が30分近く発砲を続ける中、右往左往する警察官たち

2022年5月24日、銃を持った男がテキサス州ユバルディ市のロブ小学校に侵入し、5年生の生徒19人と教師2人を射殺した――そのうちの1人がヴェロニカ・テスさんだった。犯人は突入した警察に射殺されるまで、1時間以上も校内に立てこもった。校舎の外では取り乱した親や家族が警察に詰め寄り、警察はバリケードを張って中に入ろうとする保護者を止める一方、校内では子どもたちがなんとか助けを呼ぼうとしていた。事件から約2年、司法省はユバルディ乱射事件での警察当局の不手際をまとめた詳細な報告書を発表した――その内容は実に忌まわしい。

ついに報告書が公表されたことで事件への関心が再び高まる中、母親のマタさんは壁にかかったテスさんの遺影をじっと見つめ、戦い続けることを誓った。「テスは戦う子でした」とマタさん。「あの子たちがあんな目に遭っていいはずがない。本来なら、今もこの世で生きていたのに」。

1月17日夜にメリック・ガーランド司法長官が遺族と面会し、翌木曜の午前に報告書が一般公開された。複数のメディアが入手した報告書のコピーには、「一言で言うなら、2022年5月24日ロブ小学校で発生した大量殺害事件への対応は失策だった」と書かれていた。

「本報告書に記された痛ましい教訓は、すでに悲劇を生んでいる状況を悪化させたり、5月24日から数日間、数週間、数カ月間の出来事で直接被害を受けた人々の痛みやトラウマを蒸し返すのが目的ではなく」、むしろ「直接被害を受けた人々に答えを提示するとともに、学ぶべき教訓や勧告を国内に広めるのが目的である」と報告書には書かれている。

これとは別に、2022年にテキサス州下院議会が行った調査も同じような結論に至り、甚大な死者を出した原因は「組織としての失敗と許されざるお粗末な意思決定」だったと非難した。「駆けつけた警察当局は、乱射事件対策訓練に従わず、罪のない被害者の救出よりも自分たちの身の安全を優先した」と、テキサス州議会の報告書は厳しく分析した。

今回の報告書に対し、遺族は複雑な心境だ――ようやく答えが出たことに安堵しつつも、悲しみと怒りは計り知れない。「すでに周知の事実が司法長官自らの口から聞けたので、多少の正義が果たされました」と、キンバリー・マタ・ルビオさんはローリングストーン誌に語った。複数の遺族が設立したNPO団体「Lives Robbed」で会長を務めるマタ・ルビオさんは、事件で10歳の娘レキシーさんを亡くした。

「複雑な気持ちだと思います。でも、やっぱり一番大きいのは怒りですね」と彼女は続けた。「報告書には挙がっていませんが、常識的な銃規制法案を施行できない連邦政府の過失でもあります」。2023年、マタ・ルビオさんは銃規制を公約に掲げてユバルディ市長選挙に出馬。落選したものの、公職への立候補はあきらめていないという。

Akiko Kato

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