フットボールアワー後藤が語る、80~90年代日本における「バンドブーム」の熱狂

―インターネットが最初からある世代とは全然違いますよね。実際、当時はどうやって音楽を掘り下げていたんですか。

後藤:ほんまに、近所の阪急淡路駅の横にあったレンタルCDショップだけです。もうそこだけが僕のアーカイブというか(笑)。そこにあるものが全てですから、そこに目当てのものがなかったら、僕の耳にはもう入ることがないっていう、すごく狭い中で音楽を聴いてたんですよ。ほんまに音楽好きな人は、繁華街の路地にあるレコードショップに行って、海外のどんなジャンルかわからんレコードをジャケ買いして掘り下げていくと思うんですけど、僕はそこまで行ってなかったので、阪急淡路駅横のレンタルCDショップが僕の音源のすべてでした。今はYouTubeでめちゃくちゃ見てますけど。

―今はどんな音楽嗜好になってるんですか?

後藤:僕はほんまに好きなジャンルが狭いんですよ。70年代~80年代の音楽に詳しいんですよねってよく言われるんですけど、全然詳しくないんです。ただ、この人とこの人とこの人は聴きまくったっていうのがあるだけで。今はうちの子どもが「うっせぇわ」とか言ってて「何それ?」「えっ知らんの?」って教えてもらってAdoを聴いてみたり、「アーニャって何?」って聞いて『SPY×FAMILY』を知って「ミックスナッツ」(Official髭男dism)を聴いたりとか。あとはApple Musicで東京のTOPランキングとかをかけるようにしています。そうすると「かっこいいな」っていうアーティストはいっぱいますね。



―最近注目してる人とかいますか?

後藤:いやもう、ベタですけど、それこそ髭男もすげえなと思うし、藤井風君とか、「かっこええなあ」と思いますね。80年代90年代のロックバンドとだいぶ違いますけど、「そんな声張らへんの?」みたいなね。ささやいてささやいて、1曲終わっていくでみたいな。僕らなんかほんまにもう、コード6つあったら曲できるやんみたいな世界ですから。エレキギターもパワーコードでええやんけみたいな。でも今、普通のメジャーコードで、「俺はお前のことが~」とか歌ってる奴の方が少ないでしょう?最近はジャズコードが普通に使われてて、コード進行も複雑な構成ですごいなって。でも他を聴いてみると、「あ、これが流行りなんや」みたいな、ちょっと残念な気がしたりもします。

―残念というのは?

後藤:「すげえ! こんな音楽やってる人おんねや!」と思って、他の人を聴いてみたら、結構みんながやってるみたいな。「流行りやったんかい!」みたいなのはちょっとありますけどね。

―そこはこのアルバムとは対極な感じですね。同じ時代のバンドでも、みんな音楽性はバラバラですもんね。

後藤:対極かもしれないですね。ジャンルの幅広さというのはすごくあると思います。

―このアルバムには、大人になってあまり音楽を聴かなくなった40~60代の世代と同時に、10~30代の若い世代にも届けたいというコンセプトがあるそうですが、後藤さんはどんな人たちに聴いてもらいたいですか。

後藤:やっぱり、若い人に聴いてほしいなというのはありますね。「懐かしいなあ」で終わらせるには、もったいない曲が多いというか。最近の曲は、極力イントロが少なくて、いきなりサビから入る曲の方がキャッチーやからみんな聴くっていいますけど、良い曲やったらそれもいいと思うんですよ。なんや、「俺らのときはイントロ聴いただけで、“あの名曲や”ってわかったもんやで」っていうおっさんの話、うるさいじゃないすか? 「おまえ、それしか知らんやんけ」っていう(笑)。当時の音楽も今の音楽も両方ある程度聴いた人間からすると、「いやこっちはこっちでええで」って思いますし、今は曲を飛ばして聴いていくような時代ではありますけど、このアルバムは曲がぜんぶ繋がってるから、若い人には「じっとしててもちゃんと次の曲に入れ替わるから聴いといたら」って思います。今もミュージシャンっていろんなジャンルの人がいっぱいいて、表現場所もYouTubeとか多岐にわたると思いますけど、当時はライブハウスでライブをやるか、大きい会場でコンサートをやるか、音楽番組もメジャーどころかU局でやってるマイナーな音楽番組かぐらいしか表現する場がなかったと思うんです。その中で、これだけたくさんのバンドがしのぎを削っていたわけですよね。そこで頭を使って何とかみんなと同じじゃない表現方法で音楽をやりたい、ただただ俺らが作る音楽を聴いて欲しいっていう熱い思いが、この作品には入っていると思います。だから若い人にも、是非聴いてみてもらいたいですね。



<リリース情報>



『俺のロック -このバンドに出会えてよかった- mixed by DJ和』
2024年1月31日(水)発売 
CD通常盤 / AICL-4500 / 定価2200円(税込)
全33曲収録
購入はコチラ:https://smar.lnk.to/ixcYSB
=収録曲=
1. ZIGGY「GLORIA」(1988年)
2. LINDBERG「今すぐKiss Me」(1990年)
3. PERSONZ「Dear Friends」(1989年)
4. JUN SKY WALKER(S)「歩いていこう」(1989年)
5. BUCK-TICK「惡の華」(1990年)
6. JUDY AND MARY「Over Drive」(1995年)
7. SIAM SHADE「1/3の純情な感情」(1997年)
8. THE YELLOW MONKEY「LOVE LOVE SHOW」(1997年)
9. L'Arc~en~Ciel「HEAVEN'S DRIVE - Remastered 2022」(1999年)
10. TRICERATOPS「GOING TO THE MOON」(1999年)
11. 真心ブラザーズ「拝啓、ジョン・レノン」(1996年)
12. COMPLEX「BE MY BABY」(1989年)
13. シャ乱Q「ズルい女」(1995年)
14. モダンチョキチョキズ「ジャングル日和」(1993年)
15. BAKU「ぞうきん」(1991年)
16. LÄ-PPISCH「パヤパヤ」(1987年)
17. GO-BANG'S「あいにきてI・NEED・YOU!」(1989年)
18. 爆風スランプ「リゾ・ラバ -resort lovers-」(1989年)
19. SHOW-YA「限界LOVERS」(1989年)
20. 聖飢魔Ⅱ「FIRE AFTER FIRE」(1986年)
21. 筋肉少女帯「踊るダメ人間」(1991年)
22. THE MODS「激しい雨が」(1983年)
23. REBECCA「フレンズ」(1985年)
24. PINK SAPPHIRE「P.S. I LOVE YOU」(1990年)
25. FLYING KIDS「幸せであるように」(1990年)
26. ECHOES「ZOO (Single Version)」(1989年)
27. SCANCH「恋のマジックポーション」(1991年)
28. カステラ「ビデオ買ってよ」(1989年)
29. ジッタリン・ジン「プレゼント (Album Version)」(1990年)
30. アンジー「天井裏から愛を込めて (シングルバージョン)」(1988年)
31. BLANKEY JET CITY「赤いタンバリン」(1998年)
32. UNICORN「大迷惑 (シングル・ヴァージョン)」(1989年)
33. X「紅」(1989年)

official HP https://www.j-popper.jp/

Rolling Stone Japan 編集部

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