フットボールアワー後藤が語る、80~90年代日本における「バンドブーム」の熱狂

―SCANCHをはじめ、本当に個性的なバンドばかり並んでますけど、中盤の、シャ乱Qからモダンチョキチョキズ、BAKU、LÄ-PPISCH、GO-BANG'S、爆風スランプあたりはより個性が際立ったバンドのコーナーになっています。

後藤:こうして見てみると、所謂Jロックって呼ばれていても、後にメジャーシーンのヒットチャートにグーンと入っていくシャ乱Qみたいな人たちと、自分たちの音楽により傾いて活動を続けていく人たちに分かれていくような気がしますね。ジッタリン・ジンも数年前にライブをやってる動画を観ましたし、THE MODSなんかはこの中ではだいぶ先輩バンドだと思うんですけど、活動してますし。曲順も時系列もごちゃごちゃになってるから面白いですよね。僕が当時見てたスペースシャワーTVの申し子のようなTRICERATOPSの「GOING TO THE MOON」なんかは、当時流れまくってましたから、その辺の思い出もあります。真心ブラザーズ「拝啓、ジョン・レノン」も歌というよりスペースシャワーTV で流れていたPVのイメージがすごくありますね。モダンチョキチョキズは、「なんやこのバンド!?」みたいな(笑)。僕らが大阪で仕事し出して、頑張らなあかん言うて一生懸命劇場からテレビにやっと出れた頃に、一緒に仕事してるディレクターさんと喋ってたら音楽の話になって、「いやじつは僕、モダンチョキチョキズにおったんですよ」って言われて。「何それ、どんな経歴やねん!?」みたいなこともありました(笑)。



―バンド解散後に別の活動をしている人も多いですもんね。この中だとBAKUの車谷浩司さんがAIR名義でソロデビューしたり。

後藤:AIRさんは確か岩尾(望)が仲良かったですよ。あいつね、僕より全然ミュージシャンの知り合い多いんですよ。アーティストの結婚式で歌ってくれって言われて、ACIDMANの演奏で何かを歌うみたいな。「どんなんやねんそれ!」って。

―ええ~! すごいことやってますね。

後藤:そうなんですよ。だから、このジャケット岩尾でもよかったんちゃうかなって(笑)。

―いやいやいや(笑)。岩尾さんとは音楽の話もしますか?

後藤:そうですね、相方も音楽はすごく好きなので。ジャンルは自分と重なる部分がブランキーぐらいですけど、このアルバムの曲は同時期に通ってきてますね。

―80年代から90年代って、音楽にしても漫才にしても、すごくテンポが速くなったり言葉選びが鋭くなっていった時代の変革期だと思うんです。そういう時代から受けた影響ってあると思いますか。

後藤:当時の音楽の歌詞とか歌い方が、僕の芸人としてのところに影響として出ているかはわからないです。ただ、僕が子どもの頃に見ていた歌番組のそれとはまったく違って、今思えば時代が変わっていくところに追いついたり、追い越したり、追い越されたりとかっていう感覚はあったかもしれないです。それが今、我々もある程度の年齢になっていろんなものが流行ったりいろんなものがなくなっていったり、いろんな後輩が出てきたりとかっていうところと似ているかもしれないですね。でもやっぱり一番の影響っていうのはメジャーシーンにあらゆるジャンルの音楽が出てきたっていうことじゃないですかね。「音楽ってロックとかフォークだけちゃうの?」「ロックってそんなに細分化されてんの?」みたいなことを教えてくれた時代かなと思います。バンドって3ピースでも4人でも良いし、モダンチョキチョキズみたいにいっぱいいてもいいんだよみたいな。

―歌番組でも80年代頭ぐらいまでは、演歌、歌謡曲、アイドルっていう感じだったのが、こういうバンドのいろんな音楽が混ざってきたことで、変わりましたよね。

後藤:そうなんですよね。それこそC-C-Bの「Romanticが止まらない」みたいなポップスもそうですよね。今まで見てた「夜のヒットスタジオ」で後ろのおっちゃんが弾いてるドラムと明らかに違う、薄っぺらい板を叩いてポンポン鳴ってて、「なんやあれ」みたいな。そういう文化が入ってきたり、一方でこのアルバムに入ってるようなロックバンドがごっついドラムをバーン!と派手に叩いてかっこいいみたいな、シンプルでわかりやすい衝撃っていうのはありましたね。

―歌謡曲のバックって、指揮者がいるオーケストラが演奏していましたからね。

後藤:そうそう。白いスーツを着たおじさんが自分の出番を待ってるみたいな。なんか、“音楽って勝手に流れてくるもん”だと思ってたんですよ。アイドルの子が、「はいどうぞ」って言われて、スモークがバーンって出て音楽が始まって、ステップを踏んで歌い出すみたいな、勝手に流れてくるもんやっていうね。でも、バンドの人たちを見ていたら、“自分で自分の好きな音を鳴らす”っていうイメージを持ったんですよね。そういうバンドを見て、「この人はどんな音楽が好きなんだろう」って掘り下げて聴いたりとか。聖飢魔Ⅱを聴いてたら、姉ちゃんに「この人たちはキッスというバンドをモチーフにしてるんだよ」って教えてもらって、「そうなんや!?」と思って雑誌でキッスのジャケットを見たりレコードを聴いたり。でも、我々の時代はそこで終わっていたんですよ。今はそこからYouTubeでキッスの70年代のライブの模様とか見れるわけでしょ? うらやましいですよ。僕らはそうはいかなくて、どこかで止まっていたから、マジでうらやましい。

Rolling Stone Japan 編集部

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