フットボールアワー後藤が語る、80~90年代日本における「バンドブーム」の熱狂

―当時、バンドブームの影響ってどんなところにありましたか?

後藤:「おまえ、ちょっと前まで超合金のおもちゃ欲しい言うてたんちゃうんか!?」いうやつが、急にエレキギターを買ったりして、なんやそれ?みたいな。みんなバイトを始めて何を買うんだっていったらギターやったんですよね、あの時代。何かを自分の趣味にしたいっていう域は超えてましたよね。それで特に目立つでもない普通のやつが文化祭を機にヒーローになれるみたいな、そういう不思議な道具でしたね。僕は、家に親父のクラシックギターと親戚のおっちゃんの東海のチェリーサンバーストのレスポールがあったので、それを両方弾いてました。でもアンプがないから結局小さい音でエレキギターをべろんべろん鳴らすみたいな感じでしたけどね。

―バンドを組んで文化祭に出たりはしなかったですか。

後藤:ちょっとバンドブームとは時系列が離れてるかもしれないですけど、高校のときにはそれこそ軽音楽部が視聴覚室でライブを開催して、女の子はみんなバーッと観に行くんですよ。自分もギターが弾けるけど、バンドを組んでなくて聴いてるのは長渕剛。「なんや、あっちばっかり目立ちやがって。よし、わかった」と思って、高2のときに1カ月半バイトしてヤマハAPX-10Sっていうエレアコを買って、文化祭のときにかたや視聴覚室では軽音楽部がキャーキャー言われている中、僕は廊下でギターとハーモニカで弾き語りをしたのを覚えてます。

―バンドブームというと、必ず話題に出るのが「イカ天」(三宅裕司のいかすバンド天国)ですが、後藤さんはご覧になったことありましたか?

後藤:僕の記憶では、「いか天」って関西ではやってなかったんですよ。あるいはU局(サンテレビなど)で無茶苦茶夜中に、何週も遅れて流れるとかそんなレベルで、あんまり届いてなかったです。要は、(イカ天出身バンドは)もういきなりメジャーシーンにいる人たちっていう感じのイメージでした。だからブランキーもスペースシャワーTVで初めて観ましたし、「イカ天」出身だったんだっていうのは後に知りました。でもこの時代ってメジャーシーンでありながら、それこそLÄ-PPISCHみたいな今まで聴いたことのなかったような音楽をやるバンドが出てきましたよね。それとかアンジーみたいな、ほんまにロック、パンク好きでピストルズとかUKの音楽から影響を受けてるバンドって、よっぽどの音楽好きじゃないですか? だからこういうバンドを聴くことで、みんないろんな音楽を知るようになっていったと思うんですよ。

―そういったバンドを掘り下げて聴くことで、より音楽の世界が広がったというか。

後藤:例えばSCANCHがグラムロックであるっていうこと自体、14歳の頃には最初はわからないんです。でも、『ダウンタウンのごっつええ感じ』の主題歌「恋のマジックポーション」を歌っているSCANCHというバンドがカッコイイらしい、なんだあの見た目は?っていうところから、グラムロックというジャンルがあってデヴィッド・ボウイがいてT-REXがいて……とか、そうやって音楽をぐっと遡って知っていくことになった覚えはすごくありますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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