Le$が語るヒューストン・ヒップホップへの愛情、「ブログ・エラ」の交流、来日ツアーの抱負

ヒューストン・ヒップホップの先人への敬意

―最新作は『Settle 4 Le$』シリーズ第三弾ですが、『2』が2011年リリースでそこから12年が経っています。今続編を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

Le$:『Settle 4 Le$』シリーズは、常に俺とロジャースがすべての制作、またはほとんどの制作をやっているものなんだ。Vol. 1は俺にとって音楽シーンへの名刺代わりだった。今回最初の数曲に取り組んだ時に、タイトルがぴったりで、シリーズを続けるには良い時期だと感じたんだ。

―「Settle 4 Le$ 3」は全曲をミスター・ロジャースがプロデュースしたコラボ作品です。ミスター・ロジャースとのプロジェクト単位でのコラボはこれまでにも行ってきていますが、タヴァラス・ジョーダンとの出会いもあった今、それに再び取り組んだのはどういう流れがあったのでしょうか?

Le$:最近はタヴァラス、ロジャース、カード(Cardo)、ハッピー・ペレス(Happy Perez)といった多くのプロデューサーと仕事をしているんだけど、プロジェクト毎に違う雰囲気を持たせるために常にプロデューサーを切り替えたいと考えているんだ。一人のプロデューサーが担当する場合もあれば、異なるプロデューサーが担当する場合もあるよ。



―『Settle 4 Le$』もそうですが、昨年リリースの『Bigger in Texas』ではスリム・サグとキラ・カイリオン(Killa Kyleon)が参加していますよね。収録曲「Candy Blue」でマイク・ジョーンズの名曲「Still Tippin’」と同じスリム・サグのラップをサンプリングしていたり、「What it iz」のビートがスリム・サグのアルバム『Already Platinum』でのザ・ネプチューンズのビートに通じるものだったり、ブートレグ・エディションでの「Heavy in the game flow」がスリム・サグの名曲「3 Kings」ネタだったりと、2000年代のヒューストン・ヒップホップを思い出すような要素が多く感じられました。これらの取り組みには何か狙いがあるか、もしくはその時期のヒューストンのヒップホップを振り返る機会があったのでしょうか?

『Bigger in Texas』はすべて狙っていたんだ。スリム・サグは大好きなラッパーの一人。スリムは弟のレイフェイスと一緒に俺を発掘してくれたラッパーで、ミスター・ロジャースは彼のDJだったんだ。『Already Platinum』は大好きなアルバムの一つで、サウンドとヴァイブの源の一部なんだ。『Bigger in Texas』はスリムへのちょっとしたトリビュートで、俺にとっての『Already Platinum』だね。





―昨年は「Le$ is more」のVol. 2のリリースもありました。あの作品についても教えてください。

Le$:あのシリーズは大きなプロジェクトを終えるまでの間、リスナーの皆にフレッシュにいてほしくて新しい音楽を届けるためにドロップしたんだ。



―4月には『Midnight Club』(2017年)収録の「45 South」と「Top Down」のレコードが出ますが、この2曲についてのエピソードを教えてください。

Le$:この2曲は、テキサスの人たちに愛されているアルバム『Midnight Club』からの曲。俺自身も大きな2曲で、車でひたすら流してH・タウン(ヒューストンの愛称)の雰囲気を掴むのに最適な曲だと思うよ。




―今年はミックステープ『Steak X Shrimp, Vol. 1』のリリース10周年にあたります。あなたは「Steak X Shrimp」という言葉をその後もたびたび使っており、今回の日本ツアーのタイトルも「Steak X Sushi」ですが、あの作品はあなたにとって重要な作品だったのでしょうか?

Le$:南部の人達は、お金を稼ぐとステーキとシュリンプを食べるとよく言うんだ。あのネーミングは、より高い志と目標を求めるというストイックな姿勢を表している。「Steak X Shrimp」シリーズは最初のブランドだから、これからも自分にとって最も重要な名前だね。



―あなたは2000年代後半から人気を集め始め、気付けば10年以上に渡って活躍するベテランになっていますよね。現在テキサスのシーンではドン・トリヴァーやミーガン・ザ・スタリオンの活躍があったり、ビッグXザプラグ(BigXThaPlug)やザット・メキシカン・OT(That Mexican OT)が注目を集めたりと、また盛り上がりつつあるように思います。あなたは今のテキサスのシーンに関してどう感じていますか?

Le$:昔も今もテキサスのシーンが大好きだね。皆がクレイジーな才能に溢れていて、自分の持ち味を持っているんだ。メキシカン・OTは大好きだね。彼はすでにスターだけど、もっともっとデカくなってくれると思っているよ。前の質問でも言ったけど、テキサスは独自の世界があって本当に沢山のアーティストが活躍しているんだ。

―バン・Bが昨年「ヒューストンではオールドスクールのアーティストがほかの都市よりもリスペクトされている」と語って話題になりましたが、あなたの作品からもヒューストン・ヒップホップの歴史への敬意が感じられます。ヒューストンがそのような地になったのはなぜだと思いますか?

Le$:俺達のオールドスクールな先人達はリヴィング・レジェンドだよ。スカーフェイスが世界中の偉大なラッパーのお気に入りのラッパーであるようにね。彼らは誰もが単なる「過去の時代の有名人」ではなくて、今も強打者でやり続けていて高いレベルで活躍しているからだと思う。

―あなたはバン・Bなど上の世代のラッパーとの制作を多く行ってきていますが、レジェンドとの共演を通して学んだことは何かありますか?

Le$:バンとのコラボレーション・プロジェクト(2021年リリースのEP『Distant』)は制作することができて光栄だったよ。何年も親密な関係だけど、バンは間違いなく俺の家族であり学ぶこと多き指導者だと思っている。挙げるのはキリがないくらい学んだことが沢山ある。あと、スリム・サグから学んだことは無限だね。



―あなたはスリム・ゲリラ(Slim Guerilla)やラリー・ジューンなど、リスナーが「共演してほしい」と思うようなラッパーとの共演を絶妙に実現させてきていると思います。今後共演曲が出る予定のラッパーや、今気になっているラッパーはいますか?

Le$:彼らとは自然な流れでリンクして、フィーリングが合って音楽を作ったんだ。音楽を作るためには人としてフィーリングが合うかが重要だと思う。常に自然な流れに沿っているだけなんだ。

―これまでにも来日公演を何回か行っていますが、SNSを見る限り毎回楽しそうに過ごしていますよね。今回の来日で何か楽しみにしていることはありますか?

Le$:いつも日本に来るのを楽しみにしているし、日本は海外で一番好きなんだ。ここにいる仲間、人々は皆とてもクールで大好き。景色と食べ物も大好きだし、ただ日本を体感することが本当に楽しみだね。

―あなたは多作なアーティストですが、今年も何か新作が聴けるのでしょうか? もし準備中でしたら、どんな作品になるのか可能な範囲で教えてください。

Le$:今年は沢山リリースする予定だよ。昨年は『Settle 4 Le$ Vol.3』で終わったばかりだけど、ミスター・ロジャースとタバラ・ジョーダンからさらにビートが来る予定だし。ボス・ホッグ・アウトロウズ(Boss Hogg Outlawz。スリム・サグやLe$らが所属するコレクティヴ)、スリム・サグとキラ・カイリオンとの新曲にも取り組んでいるよ。

そして、ファミリーであるIITIGHTMUSICのSHUと一緒にスペシャルな作品「STEAK X SUSHI」を作ったよ。ツアー会場先行でのリリースになるから皆に来てほしいね。




「LE$ STEAK X SUSHI RELEASE JAPAN TOUR」
2024年1月19日(金)CLASSIX 町田
2024年1月20日(土)DESEO 渋谷
2024年1月21日(日)SOUND BAR LIBERA 大阪

詳細・チケット・購入:https://www.2tight.jp/shopdetail/000000025500



Le$
「45 South / Top Down」7inch
詳細:https://anywherestore.p-vine.jp/products/p7-6399

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