miletが語る、活動5年を経ても尽きないイマジネーション、エヴァン・コールからの刺激

ー結果的に涙腺が刺激されるようなミドルテンポのバラードになっています。

milet:ありがとうございます。周りにたくさん人はいるけれど、人生は一人で生きていくものなので、自分の足で歩いている姿を思い描きました。魂になって支えてくれている人の存在があって、一人だけど一人じゃないような曲を作りたかった。オーケストラの壮大さが、孤独感とたくさんの楽器がひとつになって音を紡いでいる様を描いている感じがして、二面性のある曲になったと思います。エヴァンさんの編曲によって命がたくさん集まっている感じがします。

ーその編曲を手がけたのは『葬送のフリーレン』の劇判を手がけているエヴァン・コールさんです。どんなやりとりがあったんでしょう?

milet:アニメの余韻として「Anytime Anywhere」を流していただくということだったので、劇判と統一感があったほうがいいですし、エヴァンさんにほぼお任せする形でした。エヴァンさんの『フリーレン』以外の作品もいくつも聞いていて、絶大な信頼感があったので、私のデモがどう変わっていくかがすごく楽しみでした。ギターと歌と歌詞が入っていたデモからは大きく変わりましたが、「Anytime Anywhere」のあるべき姿にしていただいた気がします。

ーアコギがフィーチャーされたパートがあったり、壮大な物語が1曲に凝縮されてるような展開ですよね。

milet:そうですね。ロードムービー的な曲でもあると思います。オーケストラの使い方がリッチで、同時にとても作りこまれている。私はいつも基本的に打ち込みでオーケストレーションやストリングスを入れて、突拍子もない楽譜を作ってしまうんですが(笑)、エヴァンさんは生で演奏することに重きを置かれていて、生演奏による一番美しい旋律を曲に落とし込んでくださった。すごく勉強になりました。

ーmiletさんはベートーヴェンをリスペクトしていたり、大学で映像の勉強をされていたのでエヴァンさんとの制作はとても刺激が大きかったんじゃないでしょうか?

milet:とても刺激になりました。自分のひとつの夢を間近で見ることができ、「まだまだ勉強が必要だな」と夢から遠ざかった感覚もありました(笑)。私は『フリーレン』を愛し、自分なりの視点で理解した最高のファンアートとして「Anytime Anywhere」を作りましたが、エヴァンさんは『フリーレン』をすごく理解していて、作品に深く入り込んでいらっしゃいます。「作品への見解や視点の広げ方は自由でいいんだな」と思わされ、いろいろな角度を持つことの大切さを学ばせていただきました。「エヴァンさんの音楽の雄大さんや荘厳さはどこから生まれているんだろう?」と思いながら、いろいろとお話させていただいたんですが、エヴァンさんは自然が大好きで、緑がたくさんある場所に住まれていて、ご自分で畑を持っていて野菜を育てているんです。そのお話を聞いて、私も作りたい曲に合わせて環境を変えていくことが大事なのかなと思いました。私はこれまで曲を作る時はイメージ先行で。例えば「Anytime Anywhere」みたいな楽曲を作る時は星空や雄大な大地を想像するんですが、実際に遮るものがない空や人が踏み入れたことのないような場所に行くと、巨大なインスピレーションがもらえると思うんです。スケジュールの問題もあって、なかなかそういったところに行けていないんですが、そうなると視界が狭まってしまう。「Anytime Anywhere」のMV撮影で久々に大自然を見たり、ライブで地方に行った際に東京とは違う空の大きさや空気の違いを感じると、小さなことまで自分の感性に突き刺さってきます。頭で想像するだけじゃなく、五感で感じることをしっかりとやっていきたいと思いました。そこで受け取ったものを鮮明に曲に落とし込む作業に挑戦してみたいです。

Rolling Stone Japan 編集部

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