miletが語る、活動5年を経ても尽きないイマジネーション、エヴァン・コールからの刺激

ー2曲目の「bliss」は『葬送のフリーレン』の特別EDテーマで、エヴァンさんが作曲とプロデュースを手掛けています。かなり民族音楽の要素が強い楽曲ですよね。

milet:そうですね。オーケストラが入った音源をエヴァンさんからいただいて、歌詞を書いていきました。「フリーレンの世界で歌い継がれているような曲として歌詞を書いてほしい」とご要望いただいたので、普遍性や愛、人が生まれて死んでいく中で命が繋がれていくことにフォーカスしました。エヴァンさんの曲からアジアの要素を感じると同時に、上品なヨーロッパのオーケストレーションの雰囲気も感じて、いろいろな世界観が混ざった懐かしさもある曲という印象を持ちました。一番感じたのは、波のうねりや大地の大きさで、人が大地を踏み締めた時に感じるひんやりとした感触までをも感じ、人間は自然を見て語り継いできた存在でもあると思い、自然の立場になって生まれては死んでいく人間のサイクルを達観した角度で描きました。

ー「Anytime Anywhere」も「bliss」も相当『フリーレン』の世界観に入り込んで制作されたんですね。

milet:そうですね。作品として本当に好きなんです。原作はアベツカサさんと山田鐘人さんによるマンガですが、山田さんの『ぼっち博士とロボット少女の絶望的ユートピア』という作品も博士とロボットの女の子の話でめちゃくちゃ面白いんです。どこか哲学的でコミカルでありつつ、辛辣さもあって、核心を衝いてくる。ロボット少女が人間の欠落や不完全な部分を指摘しているところとかがとても鋭くて、『フリーレン』もそうですが、人間をとても客観的に見ている方なんだなと思いました。私も曲を書く際に人間の感情を探しながら書いているのでとても興味深かった。私、『フリーレン』のアニメをコマ送りで細かく観たりしてるんですよ。何が起きているかを見逃したくなくて。仲間たちと一緒に『フリーレン』を観て、ディベートみたいなこともよくやっているんです。「このシーンのシュタルクの気持ちを述べよ」とか議題を設けて、みんなで延々と議論しているんですよね(笑)。思わず言い合いになって、4時間ぐらいやったこともあります。

ーそれはすごいですね(笑)。「Anytime Anywhere」と「bliss」というオーケストレーションが軸の『フリーレン』の楽曲が収められている一方で、3曲目の「Higher」はビートが効いたダークな楽曲ですよね。

milet:「Anytime Anywhere」も「bliss」も自然と人が作り出す造形美との融合を感じたので、「Higher」はがっつり打ち込みにしました。例えばラストの(Bass!)と歌詞に書いてあるところは人間がプレイできないであろう打ち込みにしたんです。エヴァンさんのオーケストレーションとはアプローチは大きく違いますが、打ち込みだからできることもたくさんあるし、AIが音楽を作る時代でもあるので振り切ってやってみました。あと、2023年はいろいろなところでライブをやらせてもらったからこそ、ライブで演奏したら空気がガラッと変わって、且つみんなで歌いたくなる曲を作ろうと思ったところもありました。アルバム『5am』ツアーに加え、海外でも何公演かライブさせてもらって、声出しありきのライブのノリがだいぶわかってきたんです。

ー初の海外での単独公演となった台北でのライブはチケットが2秒で売り切れたそうですが、どんな体験になりましたか?

milet:コロナ禍により行くことができなかった場所にようやく行くことができて、「待っててもらえたんだな」という感覚を積徳感じました。デビュー以降、ノンストップで歌ってきて、いろいろな作品と携われましたが、2023年は見えていなかったものが見えるようになった年でもありました。続けてきたことの成果を確認することもできましたね。

ー台湾では台湾の人気歌手ジェイ・チョウさんの「菊花台」をカバーされていましたが、反応はいかがでしたか?

milet:感動しました。「菊花台」は15年以上前の曲ですが、昔から好きな曲で、たくさん練習をしました。「歌えたら一緒に歌って」と言ったら、みんなが曲を知っていて大合唱をしてくれて、これまで味わったことのない気持ちになりました。その場所の人たちが昔から聞いてきた曲をカバーすることは、その場所の人たちに認めてもらう儀式のような気持ちがあって、「私は敬意を持ってこの場所にいます」という思いを「菊花台」を歌うことで表したかった。自然と客席でスマホライトが灯るという素敵な景色が広がって、私の気持ちを広い心で温かく受け止めてもらえたことに感激しました。台北は昔から大好きで、よく訪れている場所なので、気持ちが届いたことが何より嬉しかった。「最初の海外でのワンマンがここで良かった」って心から思いました。

ー他にも2023年は香港、マカオ、上海のフェスに出演されましたが、海外での活動についてどんなことを考えていますか?

milet:「海外でもこんなに私の曲を知ってもらえているんだな」って思いました。日本ではそんなに大きな歓声が上がるような曲ではない曲も海外では盛り上がったり、いろいろな発見がありました。コロナ禍を経て、新しい世界に入った感覚が強くありました。2024年もいろいろな場所に行って、私のことを知らない人の前でももっと歌っていきたいです。人が全然いない会場でも楽しんでライブをやってみたいです。

Rolling Stone Japan 編集部

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