クミコと学ぶシャンソン、一番ドラマチックでおもしろい大人の音楽



田家:原曲がジョルジュ・ムスタキで訳詞が古賀力さん。古賀力さんという方はどんな方だろうと思ったら、新谷のり子さんの「フランシーヌの場合」。

クミコ:ご存知でしたか。

田家:さっき事務所の社長の平栗さんに教えていただきました。あそこでフランス語のナレーションが入って、あれをやってらっしゃった方。

クミコ:フランス語がペラペラな方で、今はなくなってしまいましたが赤坂でブンというお店のオーナーをしてそこで歌ったり、フランスの大物の方が来ると必ずその店に来て飲んでサインをして帰る。伝説的なお店でしたね。

田家:古賀さんも銀巴里で歌ってらした?

クミコ:そうです。私が最初に出たときの大トリが古賀さんで。心臓が口から出そうなときに分厚い単行本をずっと読まれているんですよ、楽屋で。自分の番のときにパタンと閉じて歌って、また帰るとその続きを読まれる。こんな人が世の中にいるんだと思って、この境地に私はいつなれるんだろうと。彼は文学者でもあったということだと思いますね。

田家:何の本を読んでいたんでしょうね。

クミコ:なんですかね。哲学者っぽい方でしたね。

田家:なるほど。そういうお店で鍛えられたというクミコさんが金子由香利さんの代表曲「時は過ぎてゆく」を歌ってらっしゃる。あらためて歌ってみてどんなことを。

クミコ:未だに何が正解か分からないなと思いながら聴いていますね。いろいろなやり方はあるんでしょうけど、でも素晴らしい歌をずっとこの先も歌えるだろうから幸せなことだと思いますね。

田家:歌う度に感情移入が変わってくる?

クミコ:全然違いますね。おそらく毎回変わると思いますし、新たにレコーディングをすると、また違う歌になっているんじゃないかと思ったりしますと、その場その場を切り取っていくのがレコーディングなので。まさしく記録だなと思いますね。

田家:それがシャンソンという歌なのかもしれないですね。



田家:流れているのは「我が麗しき恋物語」。原曲ですね。バルバラ。10月と11月にクミコさんのコンサートがありまして、こちらは「わが麗しき歌物語~銀巴里で生まれた歌たち… 時は過ぎてゆく~」。2006年に初めてクミコさんのベスト・アルバムが出て、このタイトルが『我が麗しき恋物語』だった。

クミコ:「我が麗しき恋物語」というのはバルバラという人の代表曲なんですけど、本当にこの歌が好きなんですね。自分がたまたまこの歌を歌って、日本語詞を覚和歌子さんという詩人がつけてくれて、ちょっと世の中に知られるようになったんですけども、その前からシャンソンの中でも1、2を争うほど好きな人なんですけれども。彼女のピアノの弾き語りで歌われたりするんですけども、奥が深くて。メロディがとにかく綺麗で、声が全盛の頃は透き通ったというか、鋭利な刃物のような緊張感のある声で本当に素晴らしい方だなといつも思いながら、足元にもと思いながら自分で歌っていますね。

田家:シャンソンを先週も話にあった最初はほとんど知らないところからご自分で歌うようになって、そのとき惹かれるものはあったわけですよね。声だったりメロディだったり。

クミコ:私の場合は、比較的重くない人が好きですね。声質とか作風とかが。バルバラも調で言うとマイナーな歌はあるんですけども、それがメジャーに聴こえていく感じ。基本的にはメジャーな曲が好きなんです。どんな歌でも、悲しいものでも。そういう軽さのある悲しみ。重くて死にそうな悲しみは嫌だなと(笑)。

田家:そういう人結構いますもんね(笑)。

クミコ:人生って重いから軽いような洒脱な余裕を残した希望のある歌、美しいメロディが好きで。大体シャンソンの本家の人たちのものでもそういう好みがすごくありますね。

田家:11月のライブのタイトルが「我が麗しき歌物語」このタイトルをいただいているみたいな感じですね。

クミコ:そうですね。どこまでもあやかろうという感じですね。

田家:今回の両A面シングルにはこの曲のライブバージョンが入っておりました。それをお聴きいただこうと思います。クミコさんで「わが麗しき恋物語」ライブバージョン。

Rolling Stone Japan 編集部

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