ビリー・ジョエル来日記念 「永遠のロック少年」によるライブの魅力を徹底解剖

 
遊び心を忘れない「永遠のロック少年」

ディスク2の世界初CD化音源でシビれたのが、ニュー・ウェイブに刺激されたロックンロール・アルバム『グラス・ハウス』(1980年)から選ばれた「チャンスに賭けろ」。滅多にライブで聞く機会がないこの“ビリー流パワー・ポップ”な名曲を、2006年のマディソン・スクエア・ガーデンでは珍しく演ってくれて、80年当時と比べてもギャップを感じさせない溌剌とした歌唱が涙ものだ。同じく日本初CD化曲では、2007年にビリーが久々に発表した“新曲”のひとつ、「クリスマス・イン・ファルージャ」の収録がうれしい。本作には2008年のオーストラリア公演で収められたライブ・バージョンを収録。このヘヴィな反戦歌から、ビリーが『ナイロン・カーテン』以降も社会派としての一面を持ち続けていたことがわかってもらえると思う。




2008年の東京ドーム公演にて撮影(Photo by Tomohiro Akutsu)

ビリーがシングル・ヒットの印象だけでは到底語れない、カメレオン的な作家になった背景を考えると、売れない頃にロック誌で音楽ライターをしていた時期があり、批評性・客観性を持ったミュージシャンであることがいくらか関係しているのかもしれない。ポップス、ロックが創造性に満ちていた60年代の黄金期に青春を送った世代の宿命として、ビリーは何度となくルーツを再訪し、そこから刺激を得て創作に励んできた。「ロックマニアが演るロック」という性質が作風のバラエティを豊かにしたところはあるだろうし、それはライブの構成にも影響していると思う。2006年、2008年の東京ドームでは、誰も頼んでいないのにAC/DCの「ハイウェイ・トゥ・ヘル」をカバー。クルーにボーカルをまかせ、横でニコニコして楽しそうにギターを弾いていた。そういう遊び心を何歳になっても忘れない、永遠のロック少年なのだ。

毎回そうだが、客いじりが大好きなビリーはライブ中にオーディエンスに話しかけることもしばしば。「ピアノ・マン」など有名曲ではコーラス部分を観客にガンガン歌わせる。観客と一体になって“場”を楽しみたいタイプの人なので、観ているこちら側ものんびりしていられない。歌詞をしっかり頭に入れてライブに参加すると間違いなく何倍も楽しめるので、『ビリー・ザ・ベスト:ライブ!』で予習を重ねてからビリーを迎えることをおすすめしたい。最後の来日かも、と言われる貴重な一夜を存分に味わい尽くそう。






ビリー・ジョエル
『ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!|Live Through The Years -Japan Edition-』
2023年12月20日(水)CD発売/デジタル配信
■高品質Blu-spec CD2仕様
■2枚組全32曲収録(うち世界初CD化13曲、日本初CD化6曲)
■2023年最新マスタリング
■歌詞・対訳・解説付
購入リンク:https://SonyMusicJapan.lnk.to/BillyJoel_btb   
収録内容詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/BillyJoel/info/557731


『ライヴ・アット・シェイ・スタジアム』 
2023年12月25日(月)、28日(木) TOHOシネマズ日本橋ほか全国公開 (TOHOシネマズ日本橋/なんば の2館のみ1週間上映)
配給:カルチャヴィル
鑑賞料:2500円一律
チケット販売スケジュール:上映日の2日前から劇場HPにて販売開始
公開作品HP:https://www.culture-ville.jp/billyjoel


〈2008年11月18日東京ドーム公演セットリスト〉
1. THE STRANGER ストレンジャー
2. ANGRY YOUNG MAN 怒れる若者
3. MY LIFE マイ・ライフ
4. ENTERTAINER エンターテイナー
5. JUST THE WAY YOU ARE 素顔のままで
6. ZANZIBAR ザンジバル
7. NEW YORK STATE OF MIND ニューヨークの想い
8. ALLENTOWN アレンタウン
9. HONESTY オネスティ
10.MOVIN' OUT ムーヴィン・アウト
11.PRESSURE ブレッシャー
12.DON'T ASK ME WHY ドント・アスク・ミー・ホワイ
13.KEEPING THE FAITH キーピン・ザ・フェイス
14.SHE'S ALWAYS A WOMAN シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン
15.RIVER OF DREAMS リバー・オブ・ドリームス
16.HIGHWAY TO HELL(AC/DC) (クルーによるVo/ビリーはギター)
17.WE DIDN'T START THE FIRE ハートにファイア
18.IT'S STILL ROCK N ROLL TO ME ロックンロールが最高さ
19.YOU MAY BE RIGHT ガラスのニューヨーク
(アンコール)
20.ONLY THE GOOD DIE YOUNG 若死にするのは善人だけ
21.PIANO MAN ピアノ・マン

セトリプレイリスト:https://BillyJoelJP.lnk.to/2008


ONE NIGHT ONLY IN JAPAN
BILLY JOEL IN CONCERT
2024年1月24日(水)東京ドーム *ソールドアウト
公演ホームページ:https://billyjoel2024.udo.jp/

 
 
 
 

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