HANCEが語る大人の意地 40代からの音楽活動と海外における反響の理由

―映画がお好きで、ご自身の音楽をジャンルで「シネマティックミュージック」と位置付けているそうですね。それも海外でMVを撮る理由の1つなんですか。

じつは、僕自身の活動の一番上の目的にあるのは、「映像作品を作ること」なんですよ。一般的には、音楽活動の目的ってライブをやることだったり、映像を撮るにしても曲を聴いてもらうプロモーションの手段として撮ると思うんですけど、僕の場合は目的自体が映像作品を作ることなので、映像と音楽が一つになった総合芸術みたいな感覚があります。1stアルバムのときもそうなんですけれども、今回のアルバムも映画のサウンドトラックのような形で12曲まとめました。

―『BLACK WINE』を聴くと、とくに後半では喪失感や後悔を感じさせる曲が並んでいる印象でした。



そうですね。1stアルバムの頃から自分が扱うテーマっていうのは、未来というよりは過去のものだったりとか、自分の力でもうどうすることもできない不可逆的なものが多いんです。ただ過去を振り返るっていうこと自体は、僕はあまり悪いことだとは思ってないんですよね。曲と映像を通して、少しノスタルジックな気持ちを持って、過去を振り返ることで今を噛みしめられる部分もあると思うので、そういう大人の楽しみとしてこのアルバムを使っていただくのもいいのかなと思ってます。

―なるほど、熟成されたワインを嗜むように楽しめるという意味でタイトルが『BLACK WINE』。それってご自身の自叙伝的なイメージはなかったですか。

自分自身が滲み出ているところはあるとは思います。でも僕の場合は作品によって主人公も変えてますし、例えば一人称も私だったり僕だったり俺だったりいろんな一人称があると思うし、やっぱりどちらかというと映画作りに近いんですよね。1つ1つの作品に主人公がいて、年齢も性格も違うイメージをしながら作っそこに映像を組み合わせて1つのアルバムにするというところで、オムニバスの映画の短編集を形にしてるような感覚です。





―ジム・ジャームッシュ監督のファンということですから、さしずめこのアルバムはオムニバス映画の『ナイト・オン・ザ・プラネット』のようなイメージですか?

はい、おっしゃる通りです。もちろんトータル的に聴いていただきたい部分あるんですけど、ご自分にフィットするものとそうじゃないものも多分あると思うので、そこは自分とリンクするものを取って聴いていただくっていうのもいいんじゃないかなと思ってますね。

Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE