Silica Gel 韓国最重要インディバンドが語るギターの可能性、実験精神、来日への想い

旺盛な実験精神、多様な活動スタイル

一常に様々な音楽を聴きながらインスピレーションを得ていると思いますが、最近聴いて参考になった作品はありますか?

ハンジュ:僕が以前から大好きだったジェイムス・ブレイク、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が新譜を出したんですが、どちらも今回の作品がとても良かったし、尊敬しています。こんなことが出来たら本当に面白いだろうし、作った本人は本当に誇りを持っているだろうなと思いました。

一具体的にどんなところを気に入りましたか? Silica Gelにも生かせるようなアイデアもありましたか?

ハンジュ: OPNは今回のアルバムにちょっとロック的なトラックがいくつかあったんですが、興味深くて、ここから学ばなきゃと思いました。ちょっと話がはずれますが、今、2ndアルバムをリリースする準備をしていますが、個人的には3rdアルバムについてもどんなふうに作るのがいいか、よく想像しているんです。「もう3rdアルバムの話をするのかよ」という表情でウンヒが横から見ていますが(笑)。僕はSilica Gelがシンセサイザーをたくさん使って、ダンサブルな音楽をやってみることもできるんじゃないかと思っています。メンバーと話し合いを続けてみないとわからないですけど。



一他の皆さんはどうですか?

ウンヒ:今年の韓国のDMZ Peace Train Music Festivalでノイ!のミヒャエル・ローターがバンドで出てきたんですが、彼らのクラウトロックがすごく良かったです。僕もああいうのをやってみたいなと強く思いました。

チュンチュ:変わったことをやってみたいという考えは常にあります。「Silica Gelがなんでこんなことをしたんだろう?」と思わせられるような、ソウルフルな音楽とか……。あるいは、例えば1曲目はヘヴィメタルみたいなのに、2曲目はR&Bやファンクっぽい感じで、「なんでこんなにごちゃごちゃに混ざってるんだ!?」と思わせられるようなアルバムとか……。人間だから好みって人によって全然違うじゃないですか。だから、ざっくりした共通点だけをつかんでおいて、それ以外は全然違うものを集めたおかしなアルバムを作ったら面白いだろうなと思います。あとは、映画のサントラ・アルバムみたいな感じで発売されるんだけど、実際には音源はなく楽譜しか入ってないとか……。

ゴンジェ: 20秒だけの曲が80曲くらい入っている、”イントロ”っていうアルバムを作ってみたいと思ったこともあります。あとは、“スーパー・シングル”とか言って47分の曲だけを収録したり、いつものようにレコーディングをしておいて、最後にビートクラッシャーで音をめちゃめちゃにしたりとか…。アイデアは出て来ます。お金さえあればおかしなことをたくさんやってみたいです。



一Silica Gelは楽曲に自分たちの色を濃く反映させていることはもちろん、MVやライブでのVJ、デザインなど楽曲以外にも拘りが強く見えますし、他のアーティストたち以上にどんな活動を誰とするか自らうまくコントロールしているイメージがあります。そういうDIYで主体的な性向は、最近の活動を見ているとより強まっているようにも思えますが、どうでしょうか?

ハンジュ:初めからそういう向きは強かったと思いますが、最近になって僕たちのことがより知られるようになったり、前よりもお金が使えるようになったりして僕たちも出来ることの選択肢が多くなったので、皆さんが見たときに前よりもそういう性向で楽しんでいるように見えるのかもしれません。

一そういうやり方をこれからも守っていこうと思いますか?

ハンジュ:守っていこうと思いますが、そもそもそうすることしか出来ない性格だから仕方ないと思います(笑)。

ウンヒ:僕は音楽を本格的に始めたときから、音楽についてはSilica Gelで学んで来たので、こういう風にやること以外は出来ないと思っています。

一最近は金融会社の広告音楽を作ったり、テレビ番組の音楽監督をしたり、活動範囲がどんどん広くなっているようですが、どんな活動をするかについてはあまり制限を持たないようにしていますか?

ハンジュ:そうですね。案件ごとに悩んでみて、良さそうだったらやるし、そうでなければやらないくらいに考えています。

チュンチュ:例えば金融会社の音楽を作った時は、金融業界のとあるチームがSilica Gelの音楽を興味深く聞いてくれて、会社のコンテンツに使ってみようと考えてくれたこと自体がすごく面白いことだったです。面白そうな仕事ならやらない理由もないし、いろんな形のコラボレーションの中の一つであって、フィーチャリング形式のコラボ活動と同じような感じで捉えていました。


Silica Gelが制作したフィンテック企業、TOSSの広告映像

一そんな皆さんの活動スタイルについて、自分たちと似ている、または共感できると思うアーティストがいますか?

ハンジュ:僕にはたくさんのロールモデルがいるんですが、その中でも一番上にいるのがトム・ヨークなんです。レディオヘッドも音楽だけでなくアートワークなども一つ一つこだわりを持っていたり、メンバーそれぞれが多様な分野で活動をしていますよね。ドラマーのフィリップ・セルウェイは旅行作家もやっていて、自分のソロ・アルバムも出していますし、ベーシストのコリン・グリーンウッドはファッション・ショーのステージで演奏をしたり、ジョニー・グリーンウッドは映画音楽の仕事もたくさんやっているし、そしてトム・ヨークもソロや別バンドの仕事もやっていて。僕たちもメンバーそれぞれの得意とする分野があって、楽曲以外の部分も自分たちが自ら関わって企画するのが好きだという点で共通点を感じます。

チュンチュ:すごく真面目な感じもあるけど、友達同士でアジトに集まってラフに遊んでいる感じが作品になったり、そういうところがKing Gizzard & The Lizzard Wizardに通じるところもあるかなとお思います。彼らみたいなバンドからヒントを得られるかなと思っています。

ウンヒ:ハンジュとチュンチュの話を聞いていて、急にSUPERJUNIORのことを思い出しました。SUPERJUNIORもグループやユニットで活動するときもあるし、メンバーのシンドンは映像監督として自分のプロダクションまで持っているし。あ、たまに映像作家の人たちが私に対して「インディーズ界のシンドン!」って言ってくれることも思い出しました(笑)。

一エンジニアリングをいつもシン・ジェミンさんに任せたり、MVやファッションに関してはそれぞれMELTMIRROR、Sansan Gearという作家、ブランドに任せることが多くなっていますね。彼らもまたSilica Gelという大きなチームのメンバーであり、信頼出来るパートナーなんだろうと思っています。そうした、皆さんの周りの協業パートナーについてもお聞きしたいのですが、まずエンジニアのシン・ジェミンさんは皆さんにとってどんな存在ですか?

ウンヒ:ジェミンさんはSilica Gelの音楽と演奏の趣向だけでなく、僕たちの人間的な部分まで理解してくれています。やればやるほど良いシナジーを感じられるようになっていますね。

一MELTMIRRORはどうですか?

ウンヒ:「9」という曲を機に、たくさんの曲のMVを作ってくれましたが、今ではMELTMIRROR自身が僕たちと同じくらいSilica Gelの世界観を作っていると思います。それだけMELTMIRRORだけが作れるビジュアル要素がSilica Gelにとっての大きな部分になっていますし、僕たちもMELTMIRRORというジャンルが好きです。


チェ・ウンヒが監督を務め、MELTMIRRORと共に制作したMV「Realize」

一最後に久しぶりの日本が控えているので、どんなことを期待しているか教えてください。

チュンチュ: 僕たち、兵役の前の最後のライブが2018年初めの日本公演だったんです。その時の経験がとても良かったし、メンバーみんながすごく好きな国でもあるので、とても楽しみです。個人的には僕たちはツアー・ミュージシャンとしても、もっと活動をしないといけないんじゃないかということをずっと考えていたので、海外でのライブの機会が増えていることにワクワクしているし、そんな状況の中での日本でのライブなのでより楽しみです。

ゴンジェ:2ndアルバムを頑張って作って、次はSilica Gelの公演として日本に行けるようになりたいと思っています。

ウンヒ: 日本での活動は前からやりたかったので、今回のライブをうまく成功させたいです。日本の皆さんが僕たちの音楽を気に入ってもらえたらいいなと思っています。よろしくお願いします!




「BiKN shibuya 2023」
日時:2023年11月3日(金・祝)
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