BTSのVが語る、ソロアルバム『Layover』発表までの道のりとメンバーたちの支え、ジャズからの影響

ヒジンさんとの対話

—2022年以降、BTSの他のメンバーがソロアーティストとしてアルバムやシングルをリリースしました。ご自身のソロ活動に向けて学びや刺激などはありましたか?

何よりもまず、一人ひとりのパフォーマンスをすべて見るようにしました。これに関しては、私ほど熱心なファンは世界中のどこにもいないと思っています。実際、メンバーたちのソロ活動を追うことで自分のモチベーションアップにもなったと思います。みんなの活躍を見て誇らしい気持ちになるいっぽう、ステージ上での情熱やかっこいい姿を見て、涙ぐむ時もありました。不安にもなりました。自分の順番が来るのがわかっていましたから。正直なところ、このアルバムの収録曲の歌詞を何度も変えた理由はここにあるんです。細心の注意を払いながら、じっくり考えて丁寧に楽曲を仕上げていかないといけないと思ったんです。みんなのソロ作品に触れるたび、「自分もがんばらないと」と気持ちが引き締まる思いでした。

—メンバーには、なんらかの形でアルバム制作をサポートしてもらうことはあったのでしょうか? たとえば、楽曲を聴いてもらって感想を訊くとか。

いま思うと、メンバーのみんなには制作過程をあまり見せていなかったと思います。最初の頃は、J-HOPEに聴いてもらいました。最初にソロアルバムをリリースしたのがJ-HOPEでしたから。その後、JUNG KOOKと一緒に制作中の曲を聴いて、アルバムの方向性について話し合ったりもしました。メンバーのみんなと話したあとに気づいたのですが、音楽という点では各自がそれぞれの「色」を持っているのが本当に面白いです。一人ひとり違ったアプローチがあり、パフォーマンスの見せ方も違います。おかげで、メンバーと話し合うのはとても楽しかったです。

—メンバーに楽曲をあまり聴かせなかったのはなぜでしょう?

単純に、一対一で会う機会があまりなかったのです。それぞれの活動で忙しくしていましたから。その頃、私は『ソジンの家』(訳注:韓国の人気バラエティ『ユン食堂』のスピンオフ)を撮影していました。なので、会う機会があっても近況を報告し合うくらいで、音楽について話し合う時間がありませんでした。

—『Layover』のエグゼクティブ・プロデューサーは、あのミン・ヒジンさんです。ヒジンさんとの制作プロセスについて詳しく聞かせてください。どんなことを話し合いましたか?

当時私は、自分の人生の最終目的地について考えていました。アルバム制作がはじまった頃にヒジンさんと話をする機会があり、いろんなことについてじっくり話し合いました。小さなアイデアをはじめ、さまざまなアイデアを共有しながら、一枚のページにまとめようとしました。ヒジンさんはいろんなアイデアを持っていて、私自身が見過ごしていたことも提案してくれました。ですから、このアルバムは私たちのアイデアの融合の賜物なんです。とても楽しいプロセスでした。

ヒジンさんとは、個人的なレベルでも共感し合えると思いました。私の強みや情熱を心から理解してくれている気がします。私の才能や個性を引き出し、見事にこのアルバムに取り入れてくれました。個人的には、このアルバムを仰々しいアートピースのようなものにはしたくありませんでした。聴いてくれる人にとってのささやかなプレゼントになるような、ナチュラルでシンプルなものにしたいと思っていました。



—最後に、俳優業について質問させてください。何かの記事で「悪役を演じてみたい」とおっしゃっているのを目にしました。ちょっと意外な気がするのですが、悪役に惹かれる理由は?

私は、とにかく映画を観るのが大好きです。映画を観ていると、気づくとヒーローよりも悪役に惹かれているんです。映画を観る時は、全体を俯瞰するというか、木よりも森を見なければいけません。映画の全体像を完成させるという点で悪役は、とても重要な役割を担っていると思います。自らのカリスマを駆使して映画に命を吹き込まなければいけないのですから。悪役に深みや個性がなければ、キャラクター同士の化学反応も生まれません。となると、ヒーローも輝かない。ですから、私は気づくといつも悪役のほうに注目してしまうんです。友人や周りの人たちには、一度でいいから悪役を演じてみたい、と話しています。

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from Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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