ROTH BART BARON × Safeplanet 日本とタイ「孤高のバンド」が語り合うコラボの裏側

ROTH BART BARON、Safeplanet

 
10月18日に新作『8』のリリースを控えたROTH BART BARON(ロットバルトバロン)が、タイのバンド、Safeplanetをフィーチャーした先行シングル「BLOW」をリリースした。どちらもインディー・シーンで独自のサウンドを追求してきた孤高のバンドであり、他のバンドとコラボレートするのは初体験。両者はどんなところに惹かれあい、どのように曲を作り上げていったのか。現在、ベルリンと日本を往復しながら音楽活動をしているロットの三船雅也。そして、Safeplanetのメンバー、AことAlien(Vo, Gt)、Yii(Ba)、Doi(Dr)にリモートで話を聞いた。


ーロットとSafeplanetは、いつ頃から交流があったのでしょうか?

三船:2019年の朝霧JAMにSafeplanetが出る予定だったのが台風で中止になっちゃって。その前日、彼らが東京でライブをやったときに共演したのが最初ですね(10月11日、新代田FEVER)。

ーその時、お互いに相手のことは知っていました?

Yii:DoiがYouTubeでロットを見つけて好きになって、それでみんなで聴くようになったんです。

三船:僕は知らなくて、彼らのライブの対バンとして声をかけてもらった時にチェックしました。タイのバンドとは何度か共演したこともあるし、タイのフェスに出たこともあったんですけど、Safeplanetは僕が知っているバンドより下の世代なんですよね。彼らの音楽を聴いて、南国のバンドなのに南国っぽさを感じさせない美しいメロディーだなって思いました。自分たちが作っている音楽にも近い気がしたんですよね。

Doi:僕らもロットを聴いて自分たちと近いと感じました。ロットはいろんな音がとてもいい感じで組み合わさっている。そこが僕らと似ているなって。だから日本で共演できるのが楽しみだったんです。



ーロットと通じる多彩な音楽性は、Safeplanetにとって重要な要素ですか?

Yii:そうですね。僕らがバンドを始めた時、タイでそういうバンドはいませんでした。だから、自分たちがやったら面白いんじゃないかと思ったんです。今も意識的にいろんな音楽性を取り入れています。

三船:僕らがタイのフェスに参加した時(2016年のBIG MOUNTAIN MUSIC FESTIVAL)も、彼らのような音楽をやっているバンドはいなかったですね。。だから彼らの曲を聴いた時はオルタナティブに感じました。日本にも僕らのようなバンドは少なくて、ずっと孤高のバンドと言われていましたけど(笑)、そういうところも彼らと共通しているかもしれませんね。

ー孤高のバンド同士で共演だったんですね。ライブでの思い出は何かありますか?

三船:朝霧が中止になったこともあって、Safeplanetを見たいお客さんがなだれ込むようやってきて。お客さんが楽しそうに彼らの演奏を聴いている姿が印象的でしたね。

Doi:ロットのライブの音がすごく良かった。あと楽屋裏で好きな音楽の話をしたら、共通するバンドがいっぱい出てきて盛り上がりました。

三船:そう! すごく話があって楽しかったね。その時に強烈なインパクトがあったから、ずっと交流が続いたんだと思います。ライブの後もインスタで繋がって近況報告をしていたんです。それで「何か一緒にやりたいね」って言っていた矢先にパンデミックになってしまって。でも、僕らも彼らもパンデミックの間にすごく成長できたと思います。僕らはいろんな新しいチャレンジをして注目を集めるようになったし、彼らもタイでブレイクして。

Alien:僕らも同じように感じていました。だから今回のコラボレーションを通じて、お互いに成長したことを実感できたのは嬉しかったです。


「BLOW feat. Safeplanet」MVはSタイ・バンコクのスタジオで撮影。監督は両バンドともつながりのある映像作家・写真家のdomuが担当、Safeplanetの照明チームなどタイの映像クルーにより撮影された。

ーそのコラボレーションがロットの新作『8』に収録される「BLOW」ですね。三船くんはなぜ、この曲をSafeplanetとやりたいと思ったのでしょうか?

三船:曲ができた時、メロディーの感じが日本語っぽくないって思ったんです。ちょっとアジアっぽい気がしたんですよね。その時にふと、Safeplanetが持っている美しさとかサウンドスケープみたいなものが、この曲を彩ってくれるんじゃないかと思ったんです。そして、思えばロットは南の国に向き合ったことがないんじゃないかとも思って。そういう音楽に挑戦するなら、その相手にSafeplanetはぴったりなんじゃないかと思ったんです。

ーそれでデモテープを彼らに送った?

三船:そうです。そしたら、僕が書いたメロディーに対してAが新しいメロディーを書いてくれた。「BLOW」は2つのメロディーが交差する曲なんですけど、Aが書いたメロディーはいい意味で僕の予想を裏切るものでした。Safeplanetらしさを感じさせながらも新しさもあって、曲に新鮮な「ブロウ(息吹)」を吹き込んでくれました。

Alien:三船さんのメロディーを聴いたら自然にメロディーや歌詞が浮かんできたんです。それで僕の家にメンバーが集まって、いろいろ試しながら曲を作り上げていきました。

三船:曲のテーマみたいものは伝えてあったんですよね。こういうテーマでこういうメロディーなんだけど、あとは思いつくままにやってみない?って感じで投げたんです。僕が自宅(ベルリン)でエレキギターを弾いて歌ったデモを彼らに送って、タイでできたものを東京でレコーディングするという、音が何千キロもの旅をして生まれた曲なんです。

ー東京でのレコーディングは、どんな風に行われたのでしょうか?

三船:Safeplanetの3人がセッションして作り上げたアレンジを東京に持ってきてもらって、スタジオで一緒にレコーディングしました。その翌々日に予定されていた「BEAR NIGHT 4」(ロット主宰のライブイベント、今年はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文 、a flood of circle・佐々木亮介 などが参加した)に彼らに出てもらうことになっていたんです。スタジオでのセッションでは、「こんなベースラインはどうだろう」とか「新たにギターソロのパートを作って入れてみたらどうだろう」とか、Aがいろんなアイデアを出してくれて、その場でいろいろ試しながらレコーディングするという和気あいあいとしたクリエイティブな現場でした。思えば、こんな風に別のバンドとレコーディングするのは初めてだったかもしれない。彼らは日本のスタジオは初めてだけど、物怖じしないで自分たちが良いと思うことにどんどんトライしていましたね。たった一日だけでしたけど、すごく楽しかったです。

Yii:海外でのレコーディングは初めてだったので、とても刺激的な体験でした。レコーディングエンジニアが2人もいることに驚いたりして。

Alien:そう。レコーディングの段取りとかタイとは違ったのも興味深かった。

三船:日本人は細かいよね(笑)。

Yii:タイも細かいところは細かいけど、日本では全員が自分の役割を意識して、それをテキパキとこなしているのがすごいなって思ったんです。

三船:Safeplanetの3人もバンド内で役割分担ができていて、Yiiはエンジニア兼アレンジャーみたいな感じで全体を見ていました。レコーディングのセッションの時、Aは僕に「いい歌だった?」「いい演奏だった?」って聞いてくるんですけど、全体のバランスについてはYiiに聞いていましたね。

Yii:僕らはこれまで誰かと一緒に曲を作ったり、コラボレートしたことがなかったんですけど、三船さんは経験豊富で勉強になりました。オタクで機材のことも詳しいし。

三船:Yiiにオタクって言われたくないよ(笑)。Yiiもすごい機材オタクなんです。Aはギターのオタクで変なギターばっかり買ってるし、僕らはオタクというところでも繋がってる(笑)。

ーオタク仲間(笑)。というか、好きなものに対して強いこだわりを持っているということですよね。Safeplanetは普段はどんな風に曲を作っているのでしょうか?

Alien:最初の段階では3人それぞれにアイデアを持ち寄って自由に試してみるんですけど、そのなかから一番バンドにあったものが見つかったら、メロディーは僕とDoi。MIDIやプログラミングはYiiが担当することが多いですね.

Yii:今回、ロットと一緒に曲を作ってみて、作り方も似ているなって思いました。だからすごくやりやすかったです。

 
 
 
 

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