日が沈んで涼しい風が吹き込む18時25分、MAIN STAGEエリアがみるみるうちに来場者で埋まってゆく。韓国出身のDJ/プロデューサーであるペギー・グーは、ファッション・アイコンとしても広く知られる人気者だ。とはいえ、名門レーベルも注目するその音楽性は、キャッチーで煌びやかなハウスを軸としつつ、研ぎ澄まされたビートの美意識を宿している。アーティストネーム「구(グー)」を意匠化したアーティストロゴがLEDを埋め尽くすさまも可愛らしく、音楽スタイルの流行に捉われない、徹底して自身の嗜好を貫き磨き上げる姿勢には惚れ惚れとさせられた。今年届けられたシングル曲「(It Goes Like )Nanana」も、見事オーディエンスの大合唱に。
さあ、この日のMAIN STAGEでアンカーを務めるのは、今年『Quest For Life』『Don’t Get Too Close』という2作のアルバムを携え完全復活を果たしたスクリレックスだ。母を失うというこの上ない悲しみを体験し、一時は音楽活動を休止していた彼だが、見るからに精悍な顔つきで2015年以来となるULTRA JAPANのステージに帰還を果たした。美麗な旋律のイントロから「Leave Me Like This」へと持ち込み、腹に響くベース音をぶん回しながら「RATATA」を浴びせかける。頭上の巨大なULTRAロゴの真ん中にはスクリレックスのアーティストロゴが浮かび、フレッド・アゲインやフォー・テットと共作した「Baby again..」では、自ら卓上に乗り上がって視界一面のスマホのライト点灯を促す。
瞬く間に狂喜乱舞の光景を生み出し、今日へと至る自身のアンセム群を惜しげも無く連発するDJになったが、それはただ無軌道でアナーキーなスリルではなく、狂乱そのものをきっちりデザインし制御してみせる懐の深さを感じさせるものだった。激流の高速ダブステップと化すJack Ü「Where Are Ü Now」や、凶悪極まりないドロップへと叩き込む「Summit」、ケンドリック・ラマー「HUMBLE.」のリミックスや宇多田ヒカルとの「Face My Fears」と、クライマックスに向けて完璧なハイライトを構築してゆく手捌きの素晴らしさが、今回のスクリレックスのプレイには感じられたのである。