カミーロが語るラテンポップ論 自分らしさを肯定し、愛と多様性に満ち溢れている理由

 
ラティーノはひとつの大きなコミュニティ

ー昨年はコロンビア出身のカロルG、今年はプエルトリコ出身のバッド・バニーが、コーチェラ・フェスティバルでラテン音楽の歴史にオマージュを捧げていましたよね。カミーロさんはラテン音楽の伝統とどのように向き合ってきましたか?

カミーロ:ラテンアメリカの人々は、他のいろんな国のアイデンティティにも好意を持っていて、すべて自分たちのものであるかのように感じているんだ。例えば、バチャータはドミニカ共和国から生まれたリズムだと思うけど、あらゆるラティーノをハグしてくれる音楽でもあり、誰もが「自分の音楽」として享受している。だから、ラテンアメリカのルーツというのはすごく多様で幅広いんだけど、僕たちラティーノはひとつのコミュニティのような感じでもある。そういうマルチカラーなところがすごくいいと思うんだ。

それに多様性というのは外見だけでなく、内面にもあると思うんだよね。僕の曲は自分がどんな人間なのか、みんなの中にある多様な人間性を祝福するためのものでもありたい。

ジョン・バティステが先ごろ発表したシングル「Be Who You Are (Real Magic)」で、NewJeans、J.I.Dと一緒にカミーロさんもフィーチャーされていましたが、あの曲についてはいかがですか?

カミーロ:みんなバラバラな個性をもつ4人だよね、だからこそ参加することにしたんだ。自分とはまったく違うアーティストと分かち合うというアイデアも興味深いし、歌詞には「ありのままの自分であることに価値がある」というメッセージと熱意が込められていて、僕が伝えたいメッセージとも共鳴するものがあるように感じた。歌うのが楽しかったし、彼ら全員を尊敬している。NewJeansのパフォーマンスをさっきスクリーンで見たけど素晴らしかった。



ローリングストーンUS版のインタビューで、自分のライブは「愛とダイバーシティを祝福する場所」であると語っていましたよね。日本は残念ながらLGBTQコミュニティに対して肝要な社会とは言いづらく、だからこそお聞きしたいのですが、なぜ「愛とダイバーシティ」が大切だと思いますか?

カミーロ:非常に重要なイシューだね。ラテンアメリカでもその問題はずっとあって、ほとんど毎日のように議論されてきた。やっと最近になり、そういったコミュニティの多様性を尊重し、祝福しようという旗が掲げられるようになってきたんだ。音楽というアートは議論を深めるための問いを投げかけ、門戸を開くための素晴らしいツールだと考えている。 自分がどんな人間で、どのようにリスペクトしてほしくて、どんなふうに話し合っていきたいのか。そういう対話を生みだす場所になりうると思うんだ。

そういったコミュニティが僕の音楽に、開かれた扉や歓迎の旗のようなものを見出してくれているのは幸せなことだ。これからも僕の音楽が、LGBTQコミュニティだけでなく、自分たちの権利のために戦っているすべてのコミュニティとの対話を生み出し続けることを願っているよ。


Photo by Masato Yokoyama

ー胸元に入っているタトゥーの「INDIGO」は娘さんの名前ですよね。昨夜のライブでは妻・エバルナさんとのデュエットも印象的で、曲名どおり娘さんに捧げられた「Índigo」はとりわけ素晴らしかったです。愛する人とのクリエイティブな共同作業を通じて、カミーロさんはどんなものを得てきましたか?

カミーロ:僕は妻を深く愛しているだけでなく、深く尊敬しているんだ。彼女と出会って以来、僕はすごく成長することができたし、彼女が僕のそばで大きく成長し、お互いの成長を目の当たりにできたことを誇りに思っている。彼女は僕の大好きなアーティストであり、すべてのミュージックビデオを手掛けてきた映像監督であり、クリエイティブ・ディレクターであり、僕のキャリアを方向づけるコンセプト・ディレクターでもある。

僕が創ったものは彼女が目を通してから世に出ていく。彼女のために書いた曲も、彼女にインスパイアされた作品もたくさんある。愛、尊敬、賞賛、喜びが組み合わさったとき、愛の産物である娘のインディゴみたいに、ポジティブで美しいものだけが生まれるんだ。


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Translated by Aki Ota

 
 
 
 

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