フジロック総括 完全復活した「いつものフジロック」と変化していくフェスのあり方

2日目・7月29日(土)

【Foo Fighters】

とにかく人、人、人。たくさんの人が待ちわびる中、現れた2日目ヘッドライナーのフー・ファイターズ。ドラマーのテイラー・ホーキンスが急逝し、ア・パーフェクト・サークル、ナイン・インチ・ネイルズ等のツアーで知られるジョシュ・フリーズを迎えた編成での初のフジロック。「All My Life」から飛ばしまくり。デイヴ・グロールの歌声もバンドの演奏も、凄みすら感じる。デイヴにとって、生きることと、前進しエネルギーを放射することは同義なのではないかと思えるほどだ。

デイヴが「一緒に歌ってくれ」と言って、バンドの演奏はほぼキーボードだけになり、言葉を噛みしめるように「こんな時は生きることを学ぶときなんだ」と歌った「Time Like These」では、スマホライトを左右に揺らすオーディエンスの姿も。テイラーの存在を感じた人は少なくないだろう。演奏後、沈黙が流れ、大きな拍手が送られた。

同日にGREEN STAGEに出演しており、テイラーがフー・ファイターズのメンバーになる前に活動を共にしていたアラニス・モリセットや、ウィーザーのパット・ウィルソンも登場する場面もありつつ、とにかく「For Fuji!」を連発していたデイヴ。最後、「次のタトゥーは“For Fuji”と入れる」と嘘か本当かわからないことを言った後、「もう一曲聞きたいか?」と問いかけて、「Everlong」で締め括った。




【d4vd】

テキサス州ヒューストン出身のd4vd。日本のアニメに大きな影響を受けているネット発の気鋭のアーティストだ。ヘヴィなバンドアンサンブルの中、歌いながら走って登場し、「盛り上がっていけ!」といきなり日本語でMC。「私はd4vdです」と日本語で自己紹介し、『東京喰種トーキョーグール』や『呪術廻戦』からの影響を話したり、日本カルチャー愛全開。バンドを携え、ミラーボールが回る中、珠玉のバラード「Sleep Well」で豊潤な歌を聴かせたと思ったら、「Take Me To The Sun」ではヘヴィに躍動するオルタナロックを鳴らす。無邪気さすら感じる振れ幅が今っぽい。最後はステージから降りて、オーディエンスに近づき、めちゃくちゃ楽しそうな笑顔を浮かべ、再会を口にしていた。




【Caroline Polachek】

ライブ前、ビジョンに映る時計のイラストのカウントダウン映像からしてかわいい。カウントテンからはオーディエンスも一緒にカウントダウン。ライブに寄せる期待の大きさが伝わる中、現れたキャロライン・ポラチェックは冒頭で「アルバムをリリースして、このフェスに出られて嬉しい」と話し、感極まった。幼少期に日本に住んでいたことがあり、以前所属していたインディーポップバンド、チェアリフトでは「I Belong In Your Arms」の日本語バージョンを発表している。ゆかりの深い場所で、たくさんのオーディエンスに迎え入れられたことが余程嬉しかったのだろう。

エレクトロポップ、ラテン、ヨーデル、ドラムンベースといった多種多様な音楽を軽やかに吸い込んだサウンドを、時にバレエダンサーのように可憐に舞い、時にファイターのように拳を突き上げながら披露していくパフォーマンスはどこを切っても絵になっていた。手にとんぼが止まることすらあらかじめ決まっていたかのようだった。その圧倒的な表現力故に、何のセットもないのにシアトリカルとも思えたライブは、ハイクオリティな楽曲と歌唱力の上に成り立っている。「Bunny Is A Rider」や「So Hot You’re Hurting My Feelings」等、気軽に口ずさみたくなるキャッチーな曲があるのもまた強い。途中、同じ歳でプライベートでも親交の深い同日出演のワイズ・ブラッドを招き入れ、真っ白な衣装にロングヘア―の二人が美しいハーモニーを聞かせるスペシャルな一幕もあった。

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