BENEE、南半球のポップスターが語るメンタルヘルスと二面性【フジロック出演】

BENEE(Photo by Lula Cucchiara)

2019年の楽曲「Supalonely」がTikTokで大いにバズり、たちまちブレイクを果たしたNZ発ライジングスターがフジロック初登場(2日目土曜・7月29日に出演)。2020年のデビューアルバム『Hey u x』を経て、昨年のEP『Lychee』や最新シングル「Green Honda」「BAGELS」ではカラフルなポップワールドがさらに進化。Z世代特有の不安やメンタルヘルスと向き合い、オリジナルな存在であることを恐れず、自身のアートを追求するBENEE(ベニー)ことステラ・ベネットの素顔に迫る。

※注意:本記事には強迫性障害の描写が含まれます。

メンタルヘルスとの向き合い方

2年前、BENEEは強迫性障害を患っていると診断された。世界中のチャートを席巻しているニュージーランド出身の彼女は以前、運転中は必ず数を数えるようにしていた。1からゆっくりと数え上げていたのは、数えるのをやめた途端に事故を起こして死んでしまうと信じていたからだ。また飛行機に乗るたびに、墜落事故が起きて死ぬのだろうと本気で思っていた。そういった傾向に病名がつけられ、フルオキセチンを処方してもらい、週1で心理カウンセリングを受けるようになってからは、彼女の世界に対する見方は変化したという。「悲しみに暮れながらシャワーを浴びる日々から抜け出せたんだ。今ではシャワーの時間が楽しみ」。彼女は天使のような笑顔を浮かべながら、抗うつ剤の効果についてそう語った。

ステラ・ベネットの原動力は知識だ。バイラルヒットした「Supalonely」は10カ国のチャートでトップ10入りし、2020年の1カ月間のうちにTikTokで約70億回再生された。彼女は今でも、脅迫的観念や死をテーマにした曲を書いている。一昨年10月にリリースされたシングル「Doesn’t Matter」で、彼女はこう歌っている。“手を合わせて祈ってる/スイッチは全部オフにする/私の家は魔女の巣窟かも”。また2020年発表の「Happen to Me」では、自ら死を選ぶ人々に共感している。

「メンタルヘルスについての議論がもっと盛んになって、誰もがセラピーやカウンセリングを受けられるようにするべきだと、最近になって確信した」と彼女は話す。「すごくお金がかかるし、誰もが受けられるわけじゃないから」




2021年末のある日の午前、ビデオ通話に応じてくれたBENEEは地元のオークランドにいた。朝食を終え、一緒に暮らす犬のTuiと猫のPadasioに餌(「ピスタチオをちょっとハイソにした感じ」)を与えたばかりだという彼女はいつものようにノーメイクで、オーバーサイズの服の襟元から幾つものネックレスを覗かせている。BENEEはまさに「音楽業界のクールな女の子」だ。黒く染めた髪は首元で切り揃えられている。多くの少女が美容室でリクエストするピクシーカットの前髪は、自宅でのスタイリングには苦労しそうだが、彼女のそれは見事に整っている。ニューエイジパンクのエッジを備えたZ世代の彼女は、どんな時も自分のペースを保ちつつ、メンタルヘルスのケアを最優先している。今日はというと、着古した服を個人間で売買できるアプリDepopに出品する予定だ。売上は全額チャリティに寄付するか、金銭的な理由でカウンセリングを受けられない人々の支援に使うつもりだという。毎年そうしているように、一昨年も10月の世界メンタルヘルスデーには、彼女は過去12カ月の間に大泣きした時の写真をまとめてInstagramに投稿した。

「最近は気持ちがすごく沈んでいる時にインタビューを受けたりすることも増えた」と彼女は話す。「ある時、ふとこう思ったの。『正直な気持ちを話してしまえばいい』って。落ち込んでるって打ち明けるのをためらう必要なんかない」

Translated by Masaaki Yoshida

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