カッサ・オーバーオールを紐解く4つの視点 Tempalay藤本夏樹、和久井沙良、MON/KU、竹田ダニエル

 
4. 竹田ダニエル


1997年生まれ、カリフォルニア州出身、在住。そのリアルな発言と視点が注目され、あらゆるメディアに抜擢されているZ世代の新星ライター。「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに執筆。「音楽と社会」を結びつける活動を行い、日本と海外のアーティストを繋げるエージェントとしても活躍。著書にSNSを中心に大きな話題を呼んだ文芸誌『群像』での連載をまとめた『世界と私のAtоZ』(講談社)がある。


不安定な自己アイデンティティ、静かに、しかし沸々と湧き上がる怒りや悲しみ、そして絶望。それらを受け入れ、前に進み続ける。カッサ・オーバーオールの今作は、彼らしい内省的なムードが漂う。『ANIMALS』というタイトルにも、「人間らしさ」を奪うような社会システムに対する批判、皮肉が込められている。既存の「当たり前」に傷つけられた一人のアーティストが、表現を通して自らをヒーリングし、その音楽が広がる過程において、リスナーも新たな目覚めを起こすだろう。躁鬱病と向き合わなければいけなかった経緯から、アメリカの投薬システムや「セラピー」のあり方についても考えてきたカッサならではの視点だ。タブー視されてきたメンタルヘルスについてパーソナルに打ち明ける行為を、「社会を革新する」ことを通して、彼は新しい基準を作っていく。

メンタルヘルスについて打ち明けることに対するスティグマがまだ残るジャズやヒップホップ・シーンにおいて、旧来的な「アーティストのあるべき姿」というステレオタイプさえも変えていく。さらに、トランス差別が激化している現在のアメリカにおいて、ノンバイナリーであるトモキ・サンダースやクィアであるJ. ホアードをアルバムやバンド・メンバーに起用しているのも、一つの「抵抗」という意思表明として受け取れる。アルバム収録に参加したアーティストたちで形成されるカッサ・バンドのライブは、NPR「Tiny Desk Concert」でも披露されたように、カオスでありながら音楽を通して連帯していく、アーティストたちの強い意志が感じ取れる。カッサは間違いなく新しいサウンド、そしてアーティスト性のパイオニアだ。



J. ホアードが参加したカッサ・バンドのライブ映像




カッサ・オーバーオール
『ANIMALS』
発売中
国内盤CD:ボーナストラック収録、歌詞対訳・解説書付き
数量限定Tシャツ・セットも発売中
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13345



Kassa Overall Japan Tour 2023

2023年10月19日(木)WWWX
サポート・アクト:TBC
OPEN 18:00 / START 19:00
前売 ¥7,000 (税込/別途1ドリンク代/オールスタンディング)

2023年10月20日(金)ビルボードライブ大阪
1部:OPEN 17:00 / START 18:00
2部:OPEN 20:00 / START 21:00
チケット:S指定席 ¥8,500 / R指定席 ¥7,400 / カジュアル席 ¥6,900

詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13425

 
 
 
 

RECOMMENDEDおすすめの記事


 

RELATED関連する記事

 

MOST VIEWED人気の記事

 

Current ISSUE