そんな中でビョークは、音とムーヴメントと色彩と光を司るクイーンのごとく君臨し、自然との共生、家父長制の罪、全能の愛といった『Utopia』の多岐にわたるテーマを歌で束ねていく。『Medúlla』からの「Show Me Forgiveness」など、曲によってはステージの左奥に設置された繭型のリヴァーブ・チェンバー(彼女の細かなリクエストに則って作られたビスポーク装置で、国際的なエンジニアリング・コンサルティング会社のアラップと共同で開発)に入って歌い、限りなくナチュラルなリヴァーブ効果は、どこかプライベートな空間から漏れ聞こえる声に耳を傾けているような錯覚に陥らせる。