aikoが語る、一貫性と「少しずつ変わっていくこと」のバランス

「その場にいるときも、もう一人の自分がいるような感じ」

―「アップルパイ」は、ずっと気になっている男性への思いを映像的に描いた楽曲。この歌詞も実体験がもとになってるんですか?

aiko 基本は全て実体験が元になってできています。写真みたいな感じでいろんな場面が記憶に残ってるんですよ。その場にいるときも、もう一人の自分がいるような感じで、「今、こうやってこの人の表情を見てるけど、この角度から見るのはこれが最後かもしれないな」とか、「今悲しい顔をしたような気がしたけど、何が悲しかったんだろう。私の気のせいかな」みたいなことをずっと考えていて。実体験の中では、一緒に映画に行ったわけではなかったのですが、“一瞬でもいいから、この人のヒロインなれたらよかったけど、なれなかったな”と思ったのがきっかけでこのフレーズが出て来たんだと思います。



―「telepathy」はラグタイム風のピアノが印象的なポップチューン。自由に広がるメロディが気持ちいいな、と。

aiko ありがとうございます。「telepathy」はアルバム制作の最後のほうにできた曲なんです。アレンジャーさんにデモをお送るために、まずテンポを決めて、ピアノとボーカルだけでスタジオで録ってたら、アシスタントエンジニアさんが「いいですね」と言ってくれて。普段そんなこと言わない子なんですけど、そう言ってくれたことがすごくうれしくて、「やっぱりアルバムに入れよう」ということになりました。



―ちなみにaikoさん、誰かにテレパシーを送ることってあります?

aiko いつも送ってます(笑)。レコーディングのときも「こっち向いて」とか「あなたがそれをやってること、私は気づいてるよ」とか。私がテレパシーを感じることはないんですけど、いろんな人に送ってますね(笑)。

―(笑)どの曲にも深い想いが込められていますが、時間が経つと、曲との向き合い方が変わることもあるんでしょうか?

aiko どうですかね? そのときに本当に感じていることを曲にしているので、レコーディングでボーカルを録るときは、数週間前、数か月前、数年前の自分を向き合うというか、その時期の自分が戻ってくる感覚があって。時間が経つことで見え方というか、角度がちょっと変わることはありますね。そうやって自分と向き合うことが、楽曲制作のなかには必ずありますね。

―aikoさんの活動スタイルは一貫している印象があります。「Love Like Pop」「Love Like Rock」というツアーのネーミングも初期から貫いていますし、楽曲のアレンジを手がけている島田昌典さん、トオミヨウさんとの信頼関係も強い。これはやはり、aikoさんの意向なのでしょうか?

aiko まずアレンジャーさんに関しては、私が大好きで、尊敬してるからです。島田さん、トオミさんのことが本当に大好きです。「こういう曲にしたい」という私の想像以上のもの、面白い遊びを入れたアレンジを上げてきてくださるし、同じ人とずっと続けていくなかで、少しずつ変わっていくのもたまらないです。ツアーのタイトルがずっと一緒なのは、「こんなに長い間やれてるんだな」って振り返った時に思えたらいいな、と思って、数字が増えていく形にしました。あと、お客さんにとって、私のライブが、子供の頃から遊びに来ていた公園や地元の遊園地みたいになったらいいなと思ってるんです。遊具や乗り物は増えてるけど、そこに入ったら「ここはずっと一緒だな。やっぱり楽しいな」と思ってほしいし、「今日、家に帰ったらアレをやらないと」みたいなことを一瞬でも忘れられるような場所になったらいいなって。同じタイトルのままでも少しずつ変わっていきたいんですよね。

―オーディエンスのみなさんと目を合わせて、おしゃべりするスタイルもずっと同じですよね。

aiko そうですね。コロナでずっとしゃべれなかったけど、今年に入って、ちょっとずつ声を出せるようになったので、ファンのみなさんもトークの腕が上がってると思うんです(笑)。きっと「ライブでしゃべれるようになったらコレを言おう」って考えててくれたんじゃないかなって。面白い方々ばっかりで、グイグイ来てくださる方にも冗談で「うるさい!(笑)」って言うと、みんなも笑ってくれて。全員が演者さんみたいだし、ライブに参加してくれてるのがありがたいです。こういう関係をずっと続けていたいですし、何よりファンのみなさんのことが大好きです。

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