常田大希が語る「祈り」の真意

常田大希(Photo by Masato Moriyama)

J-POPの枠を押し広げ続けているKing Gnuの首謀者でありソングライターである、常田大希によるプロジェクト・millennium paradeの1stアルバムがリリースされた。タイトルは「これがmillennium paradeだ!」と堂々と主張するかのような、『THE MILLENNIUM PARADE』。

本作は、常田にとって大切なものが何層にも重なっているアルバムだと言っていい。常田が目指し続けている、すでにある音楽やアートを壊して再構築し、まだ誰も聴いたことのない音、誰も見たことのないサウンドスケープを生み出すことを、今作でさらにやり抜いている。その上で、自身に起きた身近な人の死を偲び、弔い、葬り、自分と周囲の人生を肯定するかのようなストーリーがアルバムを通して描かれており、常田自身の人生観をひとつの芸術として昇華させているのだ。ただし彼の人生観やエゴをそのまま生々しく吐き出しているのではなく、芸術という尊い世界の中に溶け込ませて、自身にも受け取る人にも希望を見せようとしているのだから、実に美しくて、そしてオリジナリティに満ち溢れている。膨大な音楽の知識量と圧倒的な創造力を蓄えてクリエイトし続けている常田は世間から「鬼才」と呼ばれているが、彼の芸術の根底にあるものは、生命に対する誠実さと、聴いた人に対しても「生き抜け」と愛を持って語りかける姿勢であることを、改めて感じさせられる。

常田大希が2~3年前に友人を立て続けに亡くしたこと。それが彼の人間性においても芸術の創作源においてもとても重要な出来事になっているのではないか。彼が友人の死を告白した「白日」のリリースタイミング以降、彼の歌詞やライブでの姿に触れるたびにずっとそう感じていたが、決して取材で簡単に聞き出せる話ではないだろう。話したくないかもしれないし、音楽を純粋に受け取る上では知らないほうがいいのかもしれない。今回の取材で質問を投げてみても、もしかしたら話を逸らされるかもしれない。でも、『THE MILLENNIUM PARADE』について取材をする役目を担った身としては、このテーマを避けるわけにもいかない。そんなふうに思いながら、取材現場へ向かった。

少し遅れて取材場所に到着した常田は、普段よりリラックスしているように見えるラフな格好で現れ、ときに姿勢を崩しながらソファに腰掛けて、数は少なくてもその一言一言に密度が凝縮されているかのような言葉選びで、ゆっくりと話してくれた。

これまでの6回のインタビューでは触れてこなかった部分にいざ踏み込むために、あえていつもとはちょっと角度を変えて、その場で目についた彼の私物アイテムのことから話に入ってみた。

音楽を作って伝えることで「友達」を増やしてきた

―いつも吸ってるタバコは、LUCKY STRIKE?

常田:LUCKY STRIKEかハイライトですね。

―制作や活動の中だと、どういうときに吸いたくなるんですか?

常田:「行くぞ!」っていうときも吸ってますし、「終わったー!」ってときも吸ってますね。切り替えるときに吸いがちですね。いい区切りになるというか。昔から火が好きっていうのもある気がします。だから落ち着くんだと思うんですよね、タバコの燃えてる様子が。俺ら、火が好きなやつが集まってると思う、MVとかで車も爆破したがるし(笑)。



―『THE MILLENNIUM PARADE』のジャケットも火ですし(笑)。

常田:ペリメト(PERIMETRON。常田が主宰するクリエイティブ集団。millennium paradeやKing Gnuのアートワーク全般を制作)、全員タバコ吸いますからね。今時、俺らくらい吸う人たちも珍しいんじゃないですかね。



―millennium parade(以下、ミレパ)のチームや仲間の強度は、アルバムからもハッキリと感じました。ミレパのローンチパーティー(2018年5月)を終えた直後にインタビューさせてもらったときは「俺が素直に繋がれる仲間が欲しい、というか、友達が欲しい」「自分と違うな、わかり合えないな、って感じることが昔より増えた」「音楽を伝えるということは、自分と似た人を探す、友達を作るということと似ている」という心の内を話してくれましたけど、今回のアルバムを聴くと、友達はちゃんと見つかった手応えというか。

常田:うんうん。

―幸福感はすごくあるんじゃないかなという気がしたんですけど、いかがですか。

常田:年々、開いてきてる感覚はあります。社会とのコミュニケーション能力が上がってきた実感はありますね。それは、音楽力の成長でもあり、引き出しの多さでもあるとは思うんですけど。『THE MILLENNIUM PARADE』も、すごくポップな仕上がりを意識しました。

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