アニマルズ・アズ・リーダーズ、メタル〜現代ジャズを横断する超絶技巧バンドを徹底解説

最新アルバム『Parrhesia』を携えた来日公演の展望

続く4thアルバム『The Madness of Many』(2016年)の発表後、AALとしての作品制作は長く止まることになったが、その間もトシンに対する注目度は高まっていった。中でも印象的なのがGENERATION AXEだろう。スティーヴ・ヴァイ、ザック・ワイルド(オジー・オズボーンのバンドや再始動パンテラ)、ヌーノ・ベッテンコート(エクストリーム)、イングヴェイ・マルムスティーンといったメタル系ギターヒーローの共演ライブ・プロジェクトにトシンも加入。この5人で2017年と2019年に来日し、幅広い世代の音楽ファンに感銘を与えた。また、2020年には、現代ジャズを代表するピアニストのひとりティグラン・ハマシアンのアルバム『The Call Within』に参加。両者の音楽性を完璧に折衷した7拍子の「Vortex」で極上のギターを披露している。




そうした活動を経て、2022年にはAALの5thアルバム『Parrhesia』を発表。リズム構成の複雑さは初期2作寄りだが3rdと4thでの洗練を経て巧みに整理されており、固有のメロディ&コード感覚も健在。やや仄暗い雰囲気のもと、独自の美しい音楽表現をさらに発展させている。「Monomyth」MVの暗黒ジェント舞踏(基本的には9拍子周期でアクセント移動を繰り返す楽曲に完璧に合わせる)も楽しいし、過去の来日時に食べた蒙古タンメン中本にインスパイアされたという「Red Miso」、そして「Asahi」という曲名を鑑みるに、少なからず日本とも縁のある作品に思われる。こうした楽曲の数々がライブの現場でどのように具現化されるかも楽しみだ。





実際、AALのライブは本当に素晴らしい。自分は2017年2月の大阪公演を観ることができたのだが、演奏技術と出音の良さ、それを駆使した表現力ははっきり言って異常で、複雑な楽曲群をスタジオ音源以上の精度で形にするパフォーマンスに終始圧倒されてしまった。マニピュレーターが操る同期音源付きの演奏だったのだが、変則拍子の嵐を余裕をもってこなしきるアンサンブルは全く機械的でなく、超高速フレーズの一音一音で丁寧な“間”の表現がなされていく。特に凄いのがトシンで、精密を極める超高速ギターに柔らかく丁寧なタッチが加わるフレージングは最初の一音を聴いただけで感嘆の声が漏れるほど。ハヴィエル・レイス(Gt)とマット・ガーストカ(Dr)のプレイも極上、「音源のこのリードフレーズはハヴィエルが弾いていたのか!」となる場面も多数。専属スタッフによるPAも良好で、入り組んだ楽曲をノーストレスで堪能できてしまう。

SNSで定期的に話題になる「Cafo」の無茶な手拍子(下掲動画の5分47秒あたり〜、7拍子リフの3.5・5・6・7拍目に手拍子を要求、慣れれば意外と簡単)もアンコールで披露してくれるなど外連味も十分。予備知識なしで行ったとしても確実に楽しめる最高のショウだった。そこから6年を経た今回はさらに凄いことになっているだろうし、期待は高まるばかり。できる限り多くの人に体験してほしいものである。



冒頭でも述べたように、AALの音楽は確かにメタルの系譜にあるがそこに留まらず、現代ジャズや電子音楽のリスナーにも強くアピールしうるものでもある。Ichika Nitoやポリフィアなど、YouTubeで名を馳せるテクニカル系ギターヒーローの源流でもあるし、ジェントというジャンルがその出自(2000年代末における“インターネット発の音楽”だった)から備えていたエディット感覚、近年でいうところのハイパーポップに通じる質感を受け継ぎ人力で具現化してしまうものでもある。こうした越境的な存在感、様々な文脈に繋がる音楽の凄みを体感する場として、今回の来日ツアーは絶好の機会と言えるだろう。お時間ある方はぜひ。




ANIMALS AS LEADERS PARRHESIA JAPAN TOUR 2023
2023年4月11日(火)大阪・BIGCAT
2023年4月12日(水)名古屋・CLUB QUATTRO
2023年4月13日(木)東京・Spotify O-EAST
OPEN 18:00 / START 19:00
チケット:前売 ¥6,000(税込/D代別)
公演詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=3861

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