侵攻から1年、ウクライナで目撃した日常「この戦争に勝っても、いがみ合いは続く」

ウクライナの知人に、この先1年にどうなってほしいかとよく尋ねる。ある者は平和、ある者は勝利と答える――どちらも同じことだ。ウクライナの堅固な防衛と、昨今の軍隊の成功、それに西側からの大量平気投入で、多くのウクライナ人はその可能性に楽観的になっている。だが結局のところ、ウクライナ人はみな戦争で打ち砕かれた生活を元に戻したいと願っている。1年の節目の前夜、映画製作者のユリアと会って一杯飲んだ。彼女も戦争が勃発して息子とともにベルリンに非難したが、昨年末にキーウに戻っていた。「もともとベルリンは嫌いだったの」と、ウクライナ産の白ワインをすすりながらユリアは言った。「キーウ以外の場所に住みたいと思ったことは一度もないわ」。

「街が懐かしい」と、ハルキウについてソフィも電話口で語った。「友達やみんなに会いたい」とサーシャも口をはさんだ。「街の人たちだけじゃなく、知り合いや、仲間たち。今じゃみんなバラバラだ――ウクライナ、ポーランド、ポルトガル、ブルガリア。ウクライナ国内にいても離ればなれだ」。

全面戦争から丸1年、武装紛争から8年。勝利しても、かつての状況に戻れる確証はなさそうだ。新たな怒り、新たな恐怖が国内に広がり、かつてないほど深く根を張っている。「ロシア全般に不安を感じている」とソフィが言う。「仮にこの戦争に勝っても――」。

「“いつか”だ! “仮に”じゃない!」と、背後でサーシャの声がする。

「いつかこの戦争に勝っても、いがみ合いは続くわ」とソフィは続けた。「お隣には、愚かでふざけたバカな国がいるんですもの」。

「ここまで憎いと思ったことは今までにないよ」とサーシャも言う。「死人が出ても――ロシア人ってことだけど――(まるで)大したことじゃないみたいに考える。そんなことは今までなかった。変な感じだよ……考え方という点でね。こっちが『ああよかった、HIMARS(高機動ロケット砲システム)が追加された、たくさん死者が出た』と言えば、あっちも同じことを言っている。そう考えると……世界で戦争が終わることは決してないだろう」。

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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